研究課題/領域番号 |
16K11189
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
成尾 一彦 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (30295802)
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研究分担者 |
西村 忠己 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60364072)
森本 千裕 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (70445071)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 聴覚 / 新生児 / 妊娠 / 聴性脳幹反応 |
研究実績の概要 |
妊娠中に音響や薬物などの外的因子が新生児聴覚機能に与える影響を明らかにするために、妊娠モルモットに音響負荷を行い、母体ならびに新生児モルモット の聴覚への影響を検討した。聴覚機能としては聴性脳幹反応(auditory brainstem response:ABR)で評価した。 モルモットの妊娠期間はおよそ60日から70日であり、妊娠20日以内を妊娠初期、妊娠21日から40日を妊娠中期、妊娠41日以降を妊娠後期と定義し、妊娠モルモットならびに出生後の新生児モルモットABRを測定した。音響負荷は120dBの4kH純音を4時間連続で音響負荷した。ABR測定は周波数特異的なtone burstを用いた。 平成28年度で妊娠後期でのモルモットに音響負荷した場合、新生児モルモットのABR閾値は音響負荷のない対照群と比較し、有意にABR閾値が高いことが判明した。平成29年度は、妊娠中期あるいは妊娠初期に音響負荷したモルモットからうまれた新生児モルモットでABRを測定したところ、ABR閾値が対照群より高値であることが判明した。つまり、聴力が低下することがわかった。音響負荷で影響は低周波から高周波までの周波数に影響することがわかった。 この結果より、ヒトでも妊娠後期のみならず妊娠初期でさえも、音響暴露(音響外傷)が胎児の聴覚機能にまで悪影響を及ぼす可能性が示唆された。妊婦さんでは、音響暴露は妊婦のみならず、胎児の聴覚機能まで悪影響を与える可能性が示唆された。この成果は、母子保健行政推進においても大変貴重な知見であると思われる。聴覚機能の変化に加えて、形態学的に音響負荷による変化が起きているかどうかを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内耳の形態やサイズ、有毛細胞やらせん神経節や蝸牛神経の状態を組織学的に検討する準備を行っている。予備実験として、妊娠モルモットより死産した新生仔モルモット4匹の内耳組織検査を実施した。組織検査では内耳の有毛細胞の剥離があり、有毛細胞の比較を行うために固定方法の見直しが必要であることが判明し、その解決策の模索を検討中であり時間を要している。その手法以外に、動物用CT検査で内耳の形態を評価する方法も検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
前実験ではモルモット胎児に対する音響曝露の影響を確認する目的で、妊娠期間を初期・中期・後期に分類し、それぞれの時期に音響曝露を行い新生仔モルモットにABRを実施し、コントロール群を含めた4群間で比較を行った。結果、コントロール群<妊娠初期<妊娠中期・妊娠後期の順にABR閾値の有意な増大を認めた。このことを説明するためには、内耳完成前の妊娠初期群で、なぜ有意なABR閾値の増大を認めたかの検索が必要である。 聴覚機能をABRを測定した前実験と同様に、モルモットの妊娠期間を、妊娠20日以内を妊娠初期、妊娠21日から40日を妊娠中期、妊娠41日以降を妊娠後期と定義し、120dBの4kH純音を4時間連続で音響負荷した。妊娠モルモットに対して騒音曝露を行い、新生仔モルモットの内耳を摘出し、内耳の形態やサイズ、有毛細胞やらせん神経節や蝸牛神経の状態を組織学的に検討する予定である。 予備準備として、妊娠モルモットより死産した新生仔モルモット4匹の内耳組織検査を実施した。組織検査では内耳の有毛細胞の剥離があり、有毛細胞の比較を行うために固定方法の見直しが必要であることが判明した。また蝸牛軸を含めた切断方法でも検索をおこなうため、内耳の還流固定の手技の取得と組織検査の方法の再検討を行っている。また、内耳摘出前には動物用のCT検査で内耳の形態を撮影する手続きも行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
妊娠モルモットに対して騒音曝露を行い、新生仔モルモットの内耳を摘出し、内耳の形態やサイズ、有毛細胞やらせん神経節や蝸牛神経の状態を組織学的に検討するため、予備準備として、妊娠モルモットより死産した新生仔モルモット4匹の内耳組織検査を実施した。組織検査では内耳の有毛細胞の剥離があり、有毛細胞の比較を行うために固定方法の見直しが必要であることが判明した。また蝸牛軸を含めた切断方法でも検索をおこなうため、内耳の還流固定の手技の取得と組織検査の方法の再検討を行っている。つまり、形態学的検討に遅れが生じ、本実験に移行できなかった。形態学的検討の手法が確立された後に、本実験に移行する予定である。その際には、妊娠20日以内を妊娠初期、妊娠21日から40日を妊娠中期、妊娠41日以降を妊娠後期とわけて騒音負荷を行い、内耳の有毛細胞の形態学的変化を検討する予定である。それには約30匹のモルモットなどが必要となる。
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