研究課題/領域番号 |
16K11193
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
下村 敦司 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 教授 (50340237)
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研究分担者 |
太田 亨 北海道医療大学, 個体差健康科学研究所, 教授 (10223835)
向後 晶子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20340242)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ES細胞 / Tlx3 / 聴神経様細胞 / 分化 |
研究実績の概要 |
オーディトリーニューロパチーに起因する感音難聴の再生治療の実用を目指し、ホメオボックス型転写因子Tlx3を発現させた幹細胞から聴神経様細胞を分化誘導させる方法を報告した。しかし、この方法を治療に用いるには分化効率が低すぎる。Tlx3がクロマチンのアセチル化修飾の制御を介して、胚性幹(ES)細胞から聴神経様細胞への分化運命を決定することを明らかにした。これらの結果に基づき、本研究計画は、より効率の高い分化誘導法の開発を目指し、Tlx3強制発現ES細胞から聴神経様細胞への分化過程において、Tlx3がどのようなアセチル化修飾パターンをクロマチン上に生み出すのかを明らかにすることである。 平成28年度は、まずTlx3強制発現ES細胞株の樹立を行った。Tlx3強制発現ES細胞株を作製し保管していたが、この株でのTlx3の発現量が継代と共に減少し、聴神経様細胞への分化効率が著しく落ちる。これを改善、すなわち安定かつ高い分化効率をもつTlx3強制発現ES細胞株の樹立を行った。現状用いている発現ベクターはES細胞での発現維持には適さないと考え、ヒトポリペプチド鎖伸長因子遺伝子のプロモーター(ES細胞に適しているとの報告があり)により発現を促す発現ベクターを用い、Tlx3発現ベクターの構築を行った。また、分化効率はES細胞の培養条件、特に血清のロットにより多大な影響を受ける。分化効率への培養条件による影響を抑える目的で、無血清培地およびフィーダー細胞フリーによる培養を適応した。Tlx3発現ベクターをES細胞に導入したが、導入後の培養で細胞が死滅してしまった。そこで、無血清培地培養条件の見直しを行った。結果、LIF,BMP-4,GSK3β阻害剤を含む無血清培地での培養で死滅は回避できた。今後はこの無血清培地を用いて研究を進めてゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績で述べたように、本年度は、Tlx3の発現ベクターとES細胞培養条件の見直しから行った。当初半年くらいで終了する予定であったが、予想以上に培養条件の検討に時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
見直しにより実験条件が決まったが、研究計画は半年遅れることとなった。今年度は、Tlx3によるアセチル化パターンを網羅的に調べる計画である。 Tlx3の強制発現発現により発現量に変動がある遺伝子クロマチン領域で、特にアセチル化に変化が起きていると考えられる。遅れを取り戻すため、平成29年度後半で予定していたTlx3の発現により発現量に変動が見られる遺伝子の網羅的同定を前半に行う。これにより、先ずアセチル化変化が見られるであろう遺伝子をしぼることで、アセチル化解析を効率的かつ迅速に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画遂行に当たり問題が生じた。問題解決のため実験条件の検討を行い解決した。しかし、これに時間がかかり予定していた一部実験が本年度中に行えなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定していた未遂行実験を平成29年度に行う予定である。この未遂行実験に使用する計画である。
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