研究課題
中耳病変の診断には,プローブ音を220 Hz又は226 Hzに固定した,tympanometer (TYM)と呼ばれる診断装置が広く使用されている.3歳児で罹患率の高い,滲出性中耳炎の診断には特に有効である.しかし,他の中耳病変の診断では,TYMは必ずしも有効とはいいがたい.そこで,本研究ではプローブ音を0.1 kHzから6.0 kHzまで連続的に変化させ,TYMより遥かに多くの情報を得ることができる,中耳病変のみならず内耳病変も診断できる中耳・内耳病変診断装置Sweep Frequency Impedance Meter (SFI)の開発を試みる.1. SFIの組み立ておよび正常耳での計測:外耳道内静圧制御部については,ローラーチューブポンプ及び圧力センサーを導入し,高速(200 daPa/sec)に外耳道内静圧を制御することが可能となった.外耳道に刺激音を入力し,反射音を収録する音響部については,イヤホンにEtymotic Research社のER-2,マイクロホンに同社のER-10Bを導入し,ハードウェアには専用の計測制御デジタルシグナルプロセッサー(DSP)を用意し,これにMatlab/Simulinkで記述した計測制御プログラムを組み込むことで,0.1~6 kHzの周波数掃引音の入出力が可能となった.2. 正常耳の数値シミュレーション:科学技術計算用ソフトウェア(COMSOL)を用い,新生児特有の外耳道の可動性を組み込んだFEM modelを作製し,本課題で提案する0.1~6 kHzの周波数域でのSFI結果をシミュレーションした.
3: やや遅れている
1. SFIの組み立ておよび正常耳での計測外耳道内静圧制御部について,仕様をみたすハードウェアの構成に時間を要したものの今年度中ごろまでに目途がついた.その後音響部の開発に取り組み,これまで0.1~6 kHzの周波数掃引音の入出力が可能となっている.しかし,当初計画で想定していたとおり2 kHzを越える高周波数域において,実測値と理論値の間にずれが生じており,この校正に時間を要している.2. 正常耳の数値シミュレーションSFIでの計測結果と数値シミュレーション結果を十分に比較検討できていない.
1.SFIの組み立ておよび正常耳,中耳・内耳疾患耳での計測来年度はじめは高周波数域における校正方法の検討に注力する.また,これと並行して大人において計測を試みることで計測時の問題点等について検討・解決を進める.新生児への適用についても,耳鼻科医師および言語聴覚士とすでに検討を開始しており,年度内に実施できるよう連携していく計画である.2. 正常耳,中耳・内耳疾患耳の数値シミュレーション科学技術計算用ソフトウェア(COMSOL)を用い,正常耳でのSFI計測結果を正確にシミュレーションできるようにする.それと同時にFEM modelに中耳および内耳の疾患のファクターを組込み,数値シミュレーションを行い,その結果を SFI計測結果と比較・検討する.この作業を行うことで,SFIによる診断の精度を高める.
(理由)消耗品費として計上していたシミュレーションソフト(COMSOL)の年間ライセンス料について,当初は本課題の採択後に更新時の値上げが予想されていたが,昨年度と同様の価格であったため,計上額よりも使用額が少なくなった.また,旅費を計上していたが,他の研究費を利用したため使用しなかった.(使用計画)次年度の年間ライセンスの更新費用として使用する予定である.また,本課題の打ち合わせのために,旅費として使用する.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (3件)
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