研究実績の概要 |
真珠腫性中耳炎の成因ならびに病態を解明するため、温度応答性培養皿を利用して真珠腫上皮細胞を三次元培養させ、真珠腫上皮シートの作製を目的に研究を行った。また同時に正常なケラチノサイトを培養し、中耳粘膜シートと重合させて人工鼓膜の作製を試みた。これまでのところ、鼓膜上皮シートを作製し免疫組織染色を用いて上皮の分化、増殖が正常鼓膜と同様であること、そして電子顕微鏡下での観察では基底板の存在や顆粒層におけるtight junctionの存在より、正常な鼓膜上皮層と類似した構造を有することを確認した。また中耳粘膜シートも組織学的に正常中耳粘膜とほぼ同様な組織構造が観察された。上記のように作製した鼓膜上皮シートと中耳粘膜シートがECMを介し、表裏一体となるように融合させ、三次元人工鼓膜の作製を試みたが、融合後の組織形態の維持が困難であり、また培養継続を行うための方法に苦慮し、予想したような人工鼓膜の作製は出来なかった。 真珠腫上皮シートに関してはLPSやIL-4, TNF-αなどの刺激によって反応する各種タンパクの発現をELISAおよび免疫組織染色を用いて測定したが、EGEやKGFなどの発現はコントロールとして用いた正常皮膚における発現と変化が見られなかった。真珠腫上皮シートに関する問題点としては上皮の重層化が実際の手術などで採取される検体と比較してかなり少なく、単層もしくは2,3層しか構築されない点が挙げられる。この点を改善すべくair-liquid interface methodなどを用い、今後の研究を継続して行く予定である。
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