研究課題/領域番号 |
16K11198
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
山本 和央 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (50408449)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中耳粘膜 / 粘膜再生 / 細胞シート / 真珠腫 / 癒着性中耳炎 |
研究実績の概要 |
術後に障害された中耳粘膜を早期に再生させることができれば、癒着性中耳炎では鼓膜の再癒着を防止することができ、真珠腫性中耳炎においては再形成性再発を予防することが可能になり、これまで困難であった難治性中耳炎に対する再発の防止が格段に期待できると考えられている。 これまでに我々は外耳道後壁保存型鼓室形成術の際に、術後の中耳粘膜を早期に再生させる目的として自己の培養上皮細胞シートの移植を併用するという新たな術式のヒト臨床実現化に成功しており(「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に準じ厚生労働省より承認取得)、現在までに5人の真珠腫性中耳炎の患者に細胞シート移植を施行した。全ての症例で合併症、有害事象は認めておらず、術後の鼓膜再癒着や真珠腫の再発を認めておらず経過良好である。現在は、ヒト幹細胞指針の廃止に伴い再生医療新法が施行されているため、これに基づきヒト臨床研究を行うために厚生労働省から認定を受けた聖マリアンナ医科大学特定認定再生医療等委員会への申請を行った。具体的には、これまでに細胞シート移植を行った5症例のデータを添付し各種申請書類を作成し申請し、審査を受け承認を取得することができた。 これまでの先行研究5例は東京慈恵会医科大学の単施設での臨床研究であったが、今後は聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科との多施設共同臨床研究の実施を想定している。聖マリアンナ医科大学で癒着性中耳炎もしくは真珠腫性中耳炎の患者の鼻腔粘膜を採取し東京慈恵会医科大学CPFへ輸送し細胞シートを作製する。CPFで作製した細胞シートを聖マリアンナ医科大学へ輸送し、鼓室形成術の際に細胞シート移植を行うという臨床研究である。今後、二施設での細胞シート移植を行うことで、どの施設でも同等な安全性・有効性が得られることが確認されれば、中耳手術におけるこの細胞シートを用いた粘膜再生の新規治療の展開普及が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト臨床研究開始のために不可欠な特定認定再生医療等委員会への申請および承認取得ができたため。また細胞シートの輸送を想定したcold runも数例実施できているため。
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今後の研究の推進方策 |
可及的速やかに厚生労働省地方厚生局へ届出を行い、ヒト臨床研究を開始する。臨床研究実施により、二施設での細胞シート移植を行うことで、どの施設でも同等な安全性・有効性が得られることを確認する。 また、真珠腫性中耳炎に対する通常の鼓室形成術と同様に2回に分ける段階手術施行症例も撰定し、2回目の段階手術施行時に細胞シート移植部位の組織を一部採取し、細胞シートの生着を含めた再生粘膜の組織学的な解析や細胞動態の評価や再生粘膜で変化する遺伝子を検討することで、細胞レベルでの本細胞シート移植治療の安全性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト臨床研究開始のための書類作成や申請準備にかかる費用、またcold runにおける備品、消耗品等が主な使用となり支出が抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
ヒト臨床研究の実施にあたり備品、消耗品、組織・細胞シート輸送費、品質管理試験等に使用する予定である。
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