研究課題/領域番号 |
16K11200
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
小野 宗範 金沢医科大学, 医学部, 講師 (30422942)
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研究分担者 |
伊藤 哲史 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (90334812)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 覚醒動物からの電気生理学的記録 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究実施計画に記載した、覚醒マウスの下丘神経細胞からの電気生理学的記録および、光遺伝学を応用した光刺激による細胞種のin vivo での同定を行うためのシステムを構築した。 覚醒動物からの光遺伝学を併用した電気生理学的記録は、実験開始前には想像していなかった問題があった。それは外科手術後の脳表への組織付着によって刺激光が遮断され目的とする下丘神経細胞に光が到達しないということであった。この問題に対して、①電気信号記録用のガラス電極を通して光照射を行うことと,②外科手術後の脳表の保護の徹底、を行うことでこれを解決した。このことにより下丘抑制性細胞を覚醒動物においてin vivoで同定することが可能となった。また下丘抑制性細胞にはサブタイプとして上位核である内側膝状体に投射する細胞があることが知られている。抑制性細胞のうち投射型細胞を同定するために、内側膝状体付近に光ファイバーを挿入し内側膝状体を刺激することで逆行性に下丘抑制性投射細胞を活動させることを試み、これに成功した。比較的強度の高い数ミリ秒のレーザー光を用いることで再現性高く下丘抑制性投射細胞を同定することが可能となった。 現在までに得たデータから、覚醒状態では麻酔下に比べて下丘神経細胞の自発活動が高いことと、一部の細胞で麻酔下では見られなかった音圧に対する非線形な反応様式が認められることが観察されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題において最も重要なポイントとなる覚醒マウスからの記録システムの構築に成功したため現在は順調にデータを蓄積している。本研究の目的である覚醒動物内の下丘の興奮性細胞および抑制性細胞の音反応様式の特徴の決定のためには、200程度の神経細胞からの神経応答記録をとる必要があるが、実験の効率から考えて期間内に記録および解析を完了することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は神経細胞からの電気活動の記録とともに形態学的解析を進める予定である。傍細胞トレーサー注入法を用いた記録細胞の形態の同定を可能な限り行うとともに、それが困難なケースでは記録部位をトレーサー注入によってラベルすることで記録部位の同定を行う。申請者自身のこれまでの研究により下丘内での細胞の位置が音応答特性の決定に重要であることが明らかとされてきている。異なる個体間でのデータをもとに精密な音応答特性の下丘内マップ作製を行うための形態学的技法を検討する。また、逆行性光刺激による投射型抑制細胞の同定が想定していたよりも高い効率で行うことがでいることが明らかになったことから、この技法を投射型抑制細胞の詳細な形態研究に応用することができると考えている。具体的にはエレクトロポレーション法による単一細胞への遺伝子導入を逆行性光刺激によって同定した細胞に対して行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実際購入した試薬・消耗品等の購入額が、予定予算額を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越された予算を、試薬・消耗品等の購入に充てる予定である。
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