研究実績の概要 |
本年度は、覚醒マウスの下丘神経細胞からの電気生理学的記録システム構築のための手法をまとめ、論文発表した(Ono et al., Journal of Visualized Experiments, 2018)。また、これまでの研究結果から下丘の抑制性神経回路についての総説を発表した(Ono and Ito, Journal of Experimental Neuroscience, 2018)。加えて脳幹聴覚神経回路に関する著書(The Oxford handbook of the Auditory Brainstem)の下丘に関する章(Neuron Types, Intrinsic Circuits, and Plasticity in the Inferior Colliculus)を分担執筆した。 これまでの実験結果から、覚醒動物においては、1)ニューロンの自発活動性が麻酔下に比べて10倍程度高いこと、2)抑制性ニューロンの自発活動性は、興奮性ニューロンに比べて2倍程度高いこと、3)自発活動性は様々な時間特性を持ち、多くの細胞においてバースト状の発火が散発して見られること、などが明らかとなっていた。さらに本年度は内耳損傷モデル動物を作成することで興奮性および抑制性ニューロンの自発的活動バランスが聴力レベルによって変化することが明らかとなった。これらの結果から、下丘での興奮性および抑制性ニューロンの活動レベルは下位からの入力依存性に可塑的に変化する可能性が示唆された。これらの結果は第9回アジアオセアニア生理学会にて発表した。
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