研究課題
人口老齢化による老人性難聴罹患人口の増加にもかかわらず、本難聴の予防法はいまだ確立されていない。ヒトの抗加齢研究は長い観察期間を要し速やかな成果を得にくいため、今回、老化促進・早期難聴モデルマウスであるSAMP1を用いて実験を行った。このマウスはヒトと同じく加齢性胸腺萎縮と細胞性免疫能低下、加齢性難聴(蝸牛の機能低下と萎縮)が生じるため、全身免疫機構と聴覚とを検討する格好のモデルである。申請者はこれまで、このマウスにおいて以下の2種類のCD4+T細胞分画が老人性難聴進行とともに増加することを明らかにした:★Treg:制御性T細胞(CD25+Foxp3+CD4+、あるいは、FR4+highCD4+細胞)。詳細な機序はいまだ不明だが、免疫機能低下や臓器萎縮を引き起こす。★T1R2:IL-1受容体2型を発現するT細胞(IL-1R2+CD4+T細胞)。IL-1による免疫刺激をこの受容体がブロックし、免疫機能を低下させる。そこで、SAMP1に同系Treg、T1R2、Treg+T1R2、nTnI(TregとT1R2が除かれたCD4+T細胞分画)を定期的に接種した。この結果、nTnI細胞接種は、①難聴進行を予防すること(クリック刺激と純音刺激による聴性脳幹反応のうち、螺旋神経節に一致する第1波検索)、②螺旋神経節萎縮を予防すること(組織切片観察)、③一方、蝸牛にはCD4+T細胞の浸潤は認められず、細胞の直接作用は否定的であること(組織切片観察)、④血中酸化ストレス(nitric oxide、NO)上昇を予防すること(NOアッセイ)が明らかとなった。したがって、Treg・T1R2の除去療法や、nTnI採取・増殖処置後の接種療法(全身細胞性免疫機能の若返り)にて、ヒトでも難聴が予防できる可能性が考えられる。本研究は広く老化予防(抗加齢療法)に発展し、臨床応用に則した研究と考えられる。
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