研究課題/領域番号 |
16K11205
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
南 修司郎 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (00399544)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 中耳常在菌叢 / メタゲノム解析 / 16S rRNA |
研究実績の概要 |
人間の体には、多種多様な細菌叢が存在するが、その多くが従来の培養法による細菌検査 では同定困難な難培養微生物とされる。次世代シークエンサーを用いた16S rRNAメタゲ ノム解析では、難培養微生物も含めた全ての細菌叢に含まれる DNA を丸ごと解析し、細菌 を検出・同定することが可能である。本研究の目的1は世界で初めて人の中耳常在菌叢を 明らかにすることである。目的2は慢性中耳炎の患者を対象に中耳細菌叢を明らかにする ことである。研究デザインは、中耳に炎症のない耳科手術症例と、慢性中耳炎の鼓室形成術症例から、 中耳粘膜スワブを試料とし、16S rRNA メタゲノム解析を行う観察研究である。16S rRNA メタゲノム解析はサンプルより DNA 抽出後 16S 遺伝子の可変領域 V4 を含む領域の PCR 増幅およびシークエンスを行い、それぞれの配列間の類似度から菌種の特定や菌叢全体の 構造を解析した。目的1の中耳常在菌叢を明らかにするため、中耳に炎症の無い耳科手術 (聾に対する人工内耳、耳硬化症に対するアブミ骨手術、ベル麻痺に対する顔面神経減荷 術、中耳奇形に対する鼓室形成術)を行った 66 症例から中耳スワブサンプルを採取し、16S rRNA メタゲノム解析を完了した。目的2の慢性中耳炎の細菌叢を明らかにするため、慢性 中耳炎患者 88 例より手術時に中耳スワブサンプルを採取し、16S rRNA メタゲノム解析を 完了した。人間の中耳は、これまで考えられていたよりも多くの細菌種が存在することが明らかになった。また細菌叢の変化が、活動性中耳炎と関連していることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では平成29年度から、 難治性慢性中耳炎動物モデルを用いてその中耳細菌叢解析を行う予定であった。しかしながら、過去の論文(A new experimental model of acquired cholesteatoma. Laryngoscope 2005;115:481-5.)で報告されている真珠腫性中耳炎を作成する動物モデルでは、安定した真珠腫性中耳炎の作成が困難であった。そのため、難治性慢性中耳炎動物モデルを用いた中耳細菌叢解析は遅れている。 一方、人の真珠腫性中耳炎を対象とした中耳細菌叢解析は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
人の真珠腫性中耳炎を対象に中耳細菌叢解析を進め、その重症度や、再発のしやすやについて、細菌叢との関連を調査する。遺伝子配列情報(メタゲノム解析)に加えて、遺伝子発現情報(メタトランスクリプトーム解析)、遺伝子産物の機能(メタボロー ム解析)を行い、真珠腫性中耳炎の病態生理解明やバイオマーカの探索を行う。 また我々の作成した中耳常在菌叢データベースを用いて、中耳細菌叢正常化に重要な細菌を特定していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(当該助成金が生じた状況)真珠腫性中耳炎の動物モデルが安定的に作成出来ず、その分のメタゲノム解析費用を次年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。
(使用計画)人の真珠腫性中耳炎でのメタゲノム解析をより進め、遺伝子配列情報(メタゲノム解析)だけでなく、遺伝子発現情報(メタトランスクリプトーム解析)、遺伝子産物の機能(メタボロ ーム解析)を行い、複雑な真珠腫性中耳炎の病態生理を解明する。
|