研究実績の概要 |
好酸球性鼻副鼻腔炎は、成人発症の気管支喘息やアスピリン喘息に合併することが多い難治性疾患である。患者は増加傾向にあり、著明な好酸球浸潤を伴う再発しやすい鼻茸、粘度の高い鼻汁、嗅覚障害を特徴とする。いまだに発症機序は十分解明されておらず、治療の効果も限定的である。本研究では、好酸球性鼻副鼻腔炎における凝固・抗凝固因子の線維芽細胞や好酸球に対する作用を明らかにし、こうした作用をターゲットにした新たな局所治療薬の開発を目指す。 まず、好酸球性副鼻腔炎の鼻茸線維芽細胞を実験に用いた。Protease-activated receptors (PARs)のPAR-1, 2, 3, 4がいずれも発現していることをRT-PCRと蛍光免疫染色で確認した。次に細胞をトロンビンや活性化第10因子で刺激し上清中の各種成長因子、サイトカイン、細胞外マトリックスの変化を検討した。PDGF、VEDFなどの成長因子濃度に変化は認めなかった。一方、TGF-beta濃度は加えたトロンビンあるいは活性化第10因子の濃度に応じて増加した。細胞外基質のフィブロネクチン濃度も同様に増加することが分かった。PAR-1, 2, 3, 4それぞれのアゴニストペプチドによる刺激ではPAR-4以外の刺激でTGF-beta及びフィブロネクチン濃度は上昇した。トロンビンや活性化第10因子が鼻茸線維芽細胞に作用して、好酸球浸潤に関わるeotaxinやRANTESといったケモカインの産生も促進させることを確認した。こうした結果から、トロンビンなどの凝固因子が線維芽細胞からのサイトカインや細胞外基質を介して、鼻茸形成などの組織リモデリングや好酸球浸潤に関与すること明らかとなった。 好酸球性副鼻腔炎の鼻茸由来の線維芽細胞以外に、非好酸球性副鼻腔炎の鼻茸や下鼻甲介由来の線維芽細胞について同様の検討を行って病態との関連を比較する予定である。
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