研究課題/領域番号 |
16K11214
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
北村 嘉章 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 講師 (60380028)
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研究分担者 |
武田 憲昭 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (30206982)
水口 博之 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (40247838)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アレルギー性鼻炎 / 光線療法 / 狭帯域中波紫外線 / ヒスタミンH1受容体 / アレルギー性鼻炎モデルラット |
研究実績の概要 |
ナローバンドUVB(狭帯域中波紫外線)光線療法は、308~313nmの狭帯域(ナローバンド)波長の紫外線を用いた光線療法であり、乾癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の治療に臨床応用されている。しかし、皮膚科領域で用いられているナローバンド紫外線の光線療法は、大型なハロゲン光源治療装置を用いるため、鼻腔内に照射することは不可能であった。しかし日亜化学工業がナローバンド紫外線を発光するLEDを開発し、鼻腔内への照射が可能となったため、アレルギー性鼻炎に対するナローバンドUVBを用いた光線療法の開発を行っている。アレルギー性鼻炎における最も重要なケミカルメディエーターはヒスタミンであり、ヒスタミンH1受容体は症状発現に深く関与している。ヒスタミンH1受容体は単にヒスタミンのシグナルを細胞内に伝達するのみならず、受容体自身がシグナルの調節機構に関与しているため、ナローバンドUVBによるヒスタミンH1受容体遺伝子発現亢進への抑制効果について研究をすすめている。まず、培養細胞では310nmのナローバンドUVBは305nm, 315nmの紫外線にはない波長依存性にヒスタミンH1受容体遺伝子発現の亢進を照射量依存性に抑制した。さらに、ナローバンドUVBをアレルギー性鼻炎動物モデルラットの鼻腔へ照射すると、アレルギー性鼻炎症状と鼻粘膜のヒスタミンH1受容体遺伝子発現の亢進を照射量依存性に抑制した。高用量を照射すると鼻上皮細胞の一部にアポトーシスを誘導するため、照射用量と分割照射などの照射方法についてさらに検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の培養細胞を用いた研究で、ナローバンドUVBの照射がアポトーシスを誘導することなく、波長特異的にヒスタミンH1受容体遺伝子発現の亢進を照射量依存性に抑制する効果を確認することができた。本年度はさらにアレルギー性鼻炎の動物モデルラットを用いた研究で、ナローバンドUVBの鼻腔への照射が照射量依存性にアレルギー性鼻炎症状を抑制する効果と鼻粘膜のヒスタミンH1受容体遺伝子発現の亢進を抑制する効果があることを明らかにすることができ、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いた研究で、アポトーシスを誘導することなく、波長特異的、用量依存性にアレルギー性鼻炎症状と相関するヒスタミンH1受容体遺伝子発現の亢進を抑制するナローバンド UVB の用量が明らかとなっており、またナローバンド UVBを発光するLEDを開発することで可能となった小型化したナローバンド UVB照射機器を用いてアレルギー性鼻炎動物モデルラットの鼻腔への照射実験を行う。 すでにナローバンドUVBのアレルギー性鼻炎動物モデルラットの鼻腔への照射が照射量依存性にアレルギー性鼻炎症状を抑制する効果があること、また鼻粘膜のヒスタミンH1受容体遺伝子発現の亢進を抑制する効果があることを明らかにしており、今後はさらにアポトーシスを誘導せず、照射量依存性および波長特異性にアレルギー性鼻炎症状とヒスタミンH1受容体遺伝子発現亢進を抑制する至適照射条件を明かにしていく。 またアレルギー性鼻炎症状とヒスタミンH1受容体遺伝子発現亢進の抑制効果の持続期間や安全性、さらに鼻腔に照射した場合の鼻粘膜における照射線量分布のシミュレーションを行うことで臨床応用を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) アレルギー性鼻炎の動物モデルラットへの照射方法の検討に時間を要し、ラットの使用数とラット鼻粘膜の遺伝子発現測定のための試薬の使用が予定より少数にとどまったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度はアレルギー性鼻炎の動物モデルラットへの照射方法が確立したため、ラットの使用が大幅に増加する見込みであり、次年度使用額を有効に使用する予定である。
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