研究課題/領域番号 |
16K11215
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
奥谷 文乃 高知大学, 教育研究部医療学系看護学部門, 教授 (10194490)
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研究分担者 |
村田 和子 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (50325429)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 外傷性嗅覚障害 / PET / 11C-PK11195 / マイクログリア |
研究実績の概要 |
頭部外傷は嗅覚障害の三大原因の一つである。頭部外傷によって引き起こされた重篤な嗅覚障害は、通常の感冒後あるいは呼吸性嗅覚障害に対する治療法に反応しにくいことが知られており、外傷性嗅覚障害の3割強しか回復がみられないと報告されている。 病理学的には外傷による脳の損傷部位に対し、組織の治癒過程の一つとして、その周囲に炎症反応とともにマイクログリアが集まる。マイクログリアは豊富なベンゾジアゼピン受容体をもつため、そのアゴニストであるPK11195をラジオアイソトープで標識した、C11-PK11195を作成し、これを用いて、Positron Emission Tomography (PET) を撮影することにより、脳の損傷部位をあきらかにすることができる。 われわれは5名の外傷性嗅覚障害の患者に、6ヶ月の間隔で2回PETを撮影した。嗅覚機能は基準嗅力検査で測定した。いずれも、嗅覚低下をきたす鼻副鼻腔疾患や神経変性疾患を有さないことが確認されている。嗅覚機能の回復が比較的よかった症例では、PETで鼻腔および嗅球のシグナルが増強しており、この領域にマイクログリアが集合し、組織の回復が生じていることが明らかになった。彼らはにおいの検知能力はほぼ正常に回復していたが、においの同定をする認知能力は依然として低かった。 現在のところ、PETでみられた修復部位がにおいの検知に関わる領域であり、結果に矛盾はない。さらに今後症例数を増やして、同様の検索を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予想に反して、外傷性嗅覚障害の症例数が集まらないため。
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今後の研究の推進方策 |
さらに関係者に依頼をし、外傷性嗅覚障害の症例の紹介受診を促すことにより、研究推進を図る。また、同意が得られた場合には、嗅覚機能の回復にともない、さらにもう1回PET撮影をし、脳内における回復状況を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
外傷性嗅覚障害の症例が予想に反して少なかったためと、当初購入予定の画像処理用のパソコンが他の施設との共用で使えることになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
症例の増加と、PETは同意が得られれば、嗅覚の改善にともないさらにもう1回追加する予定であり、そのためのPETの費用(1回あたり6万円程度)を新年度の経費と併せて30回分予定している。
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