アレルギー疾患は世界中で増加しており、その対策は喫緊の課題である。これまで農薬が気道アレルギーを増加させるという疫学的な証拠はありながら、そのメカニズムに関してはほとんど解明されておらず、本研究はその解明の糸口を探ることを目的に展開した。 ①in vitro影響スクリーニング法の確立:ラット好塩基球由来RBL-2H3細胞を用いて、農薬による脱顆粒反応を評価する方法を確立した。また、呼吸上皮についてはよく調べられているが気道扁平上皮に関しての基礎研究は極めて少ないため、ヒト舌がん扁平上皮癌細胞株SCC-9に対する反応評価も併せて行い、ある種のネオニコチノイド農薬は増殖促進効果を有することを見出した。②PM2.5には農薬を含む多くの物質が付着しているため、スギ花粉症患者へのPM2.5曝露の影響評価を行った。即時型反応であるくしゃみや鼻水の増悪と前日の飛散量に有意な相関があることが分かった。解析を進めると、これらの反応はスギ・ヒノキ花粉で調整しても有意差が残り、症状増悪の独立した因子であることが分かった。この成果は本邦初であり、ヒトの上気道に直接PM2.5が悪影響を及ぼす疫学的証拠をつかんだため、耳鼻咽喉科医に知らせるべく日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会で発表した。③本邦では類似研究が少なく、国内における情報収集は極めて限界があるためEUROTOXに参加して情報収集を行い、また国内の研究者と情報共有するため環境ホルモン学会において2度にわたって成果の一部を発表した。④今後の研究用にヒト口蓋扁桃組織切片とヒト鼻ポリープ組織切片の採取を終了した。 農薬が上気道に悪影響を及ぼすことが分かり、解明への糸口がつかめた。
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