研究課題/領域番号 |
16K11218
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
太田 康 東邦大学, 医学部, 准教授 (40251285)
|
研究分担者 |
石川 文雄 東邦大学, 医学部, 講師 (10130345)
鈴木 光也 東邦大学, 医学部, 教授 (50302724)
池宮城 慶寛 東邦大学, 医学部, 助教 (50439931)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 自己抗体 / IgG4 / デスモグレイン3 / IgG4-CRS / 好酸球性副鼻腔炎 |
研究実績の概要 |
好酸球性副鼻腔炎と同様な難治性の慢性副鼻腔炎の一つにimmunoglobulin (Ig) G4が鼻・副鼻腔粘膜内に多数浸潤するIgG4慢性副鼻腔炎(IgG4-CRS(chronic rhinosinusitis))が存在する。IgG4-CRSは好酸球の浸潤をきたしたり、T-helper cells (Th2)系のサイトカインが関与したり、好酸球性副鼻腔炎と類似する点が多い。 我々は手術した69例の慢性副鼻腔炎症例の鼻・副鼻腔粘膜を抗ヒトIgG4抗体を用いて、免疫染色を施行した。69例の慢性副鼻腔炎のうち、IgG4陽性細胞の浸潤が認められたのは44症例であった。大部分のIgG4は鼻・副鼻腔粘膜の粘膜固有層に存在していたが、鼻・副鼻腔粘膜上皮に認められたものが6症例存在した。 粘膜固有層に存在するIgG4陽性細胞は、その形状から形質細胞と判断され、IgG4-CRSでは粘膜固有層における形質細胞でIgG4が産生されているものと考えられた。粘膜上皮内にはこれらの形質細胞の浸潤はなく、IgG4の産生はないものと思われた。 一方鼻・副鼻腔粘膜上皮においては、上皮細胞の細胞間隙にIgG4の染色が認められた。ここはIgG4の実働の場所であり、ここに存在する抗原にIgG4が反応、集簇しているものと思われた。 細胞間隙部室の一つであるデスモグレイン3について調べるため、この6例中4例の鼻副鼻腔粘膜を抗デスモグレイン3抗体で免疫染色したところ、IgG4と同様に鼻・副鼻腔粘膜上皮細胞の細胞間隙に染色された。 これらのことからIgG4-CRSの鼻副鼻腔粘膜におけるIgG4は、デスモグレイン3に対する自己抗体であることが考えられた。また、このデスモグレイン3に対する自己抗体IgG4によって、難治性慢性鼻副鼻腔炎の病態が生じていることが考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
好酸球性副鼻腔炎と強い関連があると思われるIgG4-CRSの自己抗原と思われる一つを発見したが、まだ、自己抗原であることの確実な証明はできていない。また、他にも自己抗原はあると思われ、さらに発見を進めていかなくてはいけない。また、好酸球性副鼻腔炎そのものの自己抗原の発見には至っていない。これははじめ好酸球性副鼻腔炎の自己抗原の発見が難しく、2016年度途中でより発見しやすそうなIgG4-CRSの自己抗原の発見に切り替えたため、時間を要した。 また、好酸球性副鼻腔炎症例、IgG4-CRS症例を集めることにも時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
デスモグレイン3がIgG4-CRSの自己抗原の一つであることを、エライザー、免疫染色、ウエスタンブロット法などを用いて、実証する。 デスモグレイン3はIgG4-CRSの自己抗原の一つにすぎず、他のIgG4-CRSの自己抗原をさらに探していく。 IgG4-CRSと好酸球性副鼻腔炎との関係を分析し、好酸球性副鼻腔炎の自己抗原の同定へと進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より安く試薬の購入ができたため、未使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
薬品購入、免疫染色費用、学会参加のための旅費、論文作成費用等に使用する予定である。
|