研究実績の概要 |
基礎研究として、IL-18遺伝子欠損マウス脾臓のNK細胞を用いた実験を行っている。NK細胞はIL-18Rα・βを発現しており、IL-18が単独で直接シグナルを導入、NF-kBをリン酸化し、蛋白の合成を高め、様々な表面抗原を発現させること、IL-15 とIL-18の共刺激によりNK細胞の増殖が促進されること、さらにIL-12単独刺激によってその増殖が抑制されることなどが明らかになった。またNK細胞の増殖と増殖抑制に伴い、B220, c-kit, NKG2D, CD69, CD25, Sca-1などの表面抗原や細胞傷害活性や産生されるサイトカインの種類が著しく変化することを観察した。IL-15とIL-18の共刺激を受けたNK細胞は高い抗腫瘍活性を示すが、IL-12を添加することでIFN-γを多量に産生した後、IL-10も産生して抗腫瘍活性が低下することを観察した。これらのことから、NK細胞の活性や増殖、機能分化は抗原刺激なしでサイトカイン刺激のみで誘導されることが考えられ、がんの免疫治療の進歩にも示唆を与えるものとして、論文の作成に取り組んでいる。 臨床研究として、鼻科手術(内視鏡下副鼻腔手術)の対象となる症例の臨床背景について研究している。主な対象疾患は、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻副鼻腔内反性乳頭腫などである。副鼻腔炎においては、好酸球性副鼻腔炎を非好酸球性副鼻腔炎と比較して検討している。とくに術前、術中、術後所見のスコア化を試みて、術後成績を左右する予後因子を検討した。嗅裂部の炎症所見が術後の嗅覚障害に大きな影響を及ぼしていることが分かった。これらの臨床論文の作成にも取り組んでいる。
|