研究実績の概要 |
循環癌細胞(Circulating tumor cells: CTC)は血液中を循環する癌細胞で、転移性癌の診断や治療後の再発診断に有効であると言われ、米国では一部の癌腫において新しいバイオマーカーとして承認されている。本研究は、頭頸部扁平上皮癌の患者体内のCTCを同定し、CTCの計数及びその機能解析を行なうことにより、CTCの臨床的意義と再発・転移機構に果たす役割の解明を目的として行った。 今回の研究では、マイクロフィルターと低圧フィルトレーションシステムを使い、CTCはDAPI(+), CK(+), CD45(-)細胞として同定した。また同時にEpCAM分子の発現についても評価した。まず、健常人の末梢血に頭頸部扁平上皮癌細胞株を1000個添加したものを使って癌細胞が同定できるかどうかを調べたところ、DAPI(+), CK(+), CD45(-), EpCAM(+)細胞が同定できた。次に頭頸部扁平上皮癌患者の末梢血中のCTCの同定を試みた。計32名の頭頸部扁平上皮癌患者のうち、29名(90.6%)でCTCが同定された。CTC数は平均30.1個(0-133個/7.5ml)であった。また同時に3名の健常人の末梢血を調べたがCTCは同定されなかった。CTC数はT因子及び病期と相関したが、N因子とは相関を認めなかった。32名中12名で治療前後でのCTC数を計測したところ、治療方法に関わらず治療後は有意にCTC数が低下していた。 以上から、マイクロフィルターと低圧フィルトレーションシステムを使って頭頸部扁平上皮癌患者からCTCを同定、計数が可能であった。
|