研究実績の概要 |
頭頸部癌の化学療法においてキードラッグであるシスプラチンについて検討した。シスプラチン併用の化学放射線療法が頭頸部癌における標準療法の一つである。しかしシスプラチンは骨浸潤した腫瘍に対しての制御が悪く、また有害事象として腎機能障害が問題である。近年、drug delivery systemを応用した薬剤の開発が盛んとなっており、特に骨浸潤における問題を解消するためにシスプラチンにリン酸基をつけ電荷型にした薬剤が開発された(3Pt)。今回、頭頸部癌細胞株を用いて、3Ptとシスプラチンの抗腫瘍,腎機能障害について検討した。in vitroでの抗腫瘍効果に関しては3P tはシスプラチンよりも劣る結果であった。しかし頭頸部癌移植モデルマウスを用いた検討では、両者の薬剤は抗腫瘍効果については同等であった。腎機能障害については、シスプラチン投与群では3Pt投与群に比して、尿細管上皮細胞でのアポトーシスが亢進しており、3ptが腎機能障害が軽減していることがわかった。さらに舌癌細胞株を下顎骨に移植したモデルマウスにおいて下顎骨浸潤をCT画像にて評価検討した。3Pt投与群がコントロール群やシスプラチン群に比べて、下顎骨の骨破壊の抑制効果が高かった。以上のことから電荷型シスプラチンである3Ptは従来のシスプラチンに比して特に骨浸潤のあるような腫瘍において高い抗腫瘍効果が期待でき、また腎機能障害の軽減が図れることが分かった。以上の研究成果を現在英文論文にて投稿中である。
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