研究実績の概要 |
目的:喉頭全摘後の喉頭再生を目的とし、脱細胞技術を用いた脱細胞喉頭土台を作成し、免疫抑制剤のいらない移植医療の実現を目指す。 (1)喉頭の脱細胞技術の確立:ラット喉頭を用いた脱細胞法には機械的、化学的、酵素的な手法があるが、最も頻用され臨床的のも簡便と思われる化学法、酵素法のうち、SDS, RNAase, DNAase, Tritonなどを用いた脱細胞を試みた。結果、SDSへの浸潤を7日間行う事により最も簡便かつ十分な脱細胞がえられることがわかった。脱細胞土台において、声帯粘膜内の細胞は完全に消失したが、軟骨細胞は一部残存した。しかし、MHC class Iの発現は検出されず、DNAの定量でもDNA残存量はごくわずかであった。一方、細胞外マトリックスであるヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンなどはよく維持されており、喉頭移植に適した土台が得られたと考える。 (2)脱細胞喉頭土台の適合性の確認:脱細胞した喉頭土台を他のラットの腹部皮下、大網にそれぞれ移植し、生着度、拒絶反応の有無を確認した。非脱細胞喉頭を移植すると異物反応と炎症反応が著明で、膿瘍形成をきたしたが、脱細胞喉頭土台移植では炎症細胞は軽度で、異物反応はほぼ問題なかった。 (3)脱細胞喉頭土台による喉頭移植実験:ラットを用い脱細胞喉頭土台の喉頭移植を試みたが、脱細胞土台の軟骨面における強度は問題なかったものの、粘膜面の強度が脆弱であり、脱細胞土台の縫縮が問題になった。粘膜面の保持のためにSDS浸潤期間を調整しなおしたが、脱細胞効果、粘膜維持効果のバランスが難しく、今後の課題となった。
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