研究課題/領域番号 |
16K11231
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
花本 敦 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20625917)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | 甲状腺癌 / FDG-PET |
研究実績の概要 |
2007年から2015年の間に当科にて甲状腺乳頭癌と診断され、切除可能、遠隔転移のない新鮮例を対象とした。上記条件を満たし治療前にFDG-PETが施行された症例は75症例あった。 FDG-PETの画像はDICOM画像とし転送し画像解析ソフトであるPETSTATにて解析を行った。集積の程度の評価のパラメーターとしては集積の最大値を示すSUVmaxを算出した。 原発巣におけるSUVmaxと造影CTにおける原発巣の最大径をそれぞれの症例にて算出した。その結果、腫瘍の最大径とSUVmaxに強い相関は認めなかった。すなわち扁平上皮癌と違い、甲状腺乳頭癌においてはグルコースを多く取り込むものだけが存在するのではなく、様々なグルコースの取り込みレベルを持った癌種が存在することを示唆した。 続いて予後との相関を検討した。甲状腺乳頭癌は予後が良好であるため、粗生存率での比較は困難であったため、無再発生存率に関しての検討を行った。再発なく経過しているものを陽性としてROC解析を行った結果、SUVmaxのカットオフ値をもとめた。また無病再発生存率に関してカプランマイヤー法を用いて生存曲線を描くと有意差をもってSUVmaxが高値の群の方が予後不良であるとの結果であった。またコックスの比例ハザードモデルを用いてハザード比を算出した結果、以前からハイリスクとされていた腫瘍径、T分類、N分類よりSUVmaxの方がハザード比が高いという結果となった。 これらより甲状腺癌における、FDGの集積は予後と相関しており、これを用いて治療前に予後予測が可能であることを示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
甲状腺癌の解析対象の抽出はすでに終了しており、またPETでの解析もSUVmaxのみであるが終了している。今後は3次元解析を行い、FDG-PETにおいての甲状腺癌の不均一性や容量の解析を行う予定としている。また同時進行で免疫染色等も追加で行う予定としている。しかし今回の科研費の採用が10月であり、研究開始から半年間しか研究期間がなかったため想定より研究はやや遅れている。残りの研究期間はまだ2年間あり、予定の研究計画は遂行できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
解析対象の画像データの不均一性等を解析を行う。また対象の臨床検体を薄切し、免疫染色を糖代謝に関する抗体を用いて行う予定としている。その結果を踏まえて統計解析を行う予定としている。パラフィンブロックよりDNAを抽出し、BRAFの変異があるかをPCR法にて検索を行う。パラフィンブロックを薄切し、免疫染色を行う。対象とするものは①ヨードの取り込みのトランスポーターであるSodium Iodide Symporter(放射性ヨード治療に関与している)、②癌においてブドウ糖の取り込みに一番関与しているトランスポーターであるGlucose Transporter 1(GLUT1), ③嫌気性代謝に関与しているLactate Dehydrogenase A(LDHA), ④乳酸を細胞外に排出するトランスポーターであるMonocarboxylate Transporter 4(MCT4), ⑤好気性代謝に関与しているFatty acid synthetase(FAS), ⑥細胞周期関連蛋白質であり癌の増殖能力とも関連しているとされるKi-67を想定している。多くの抗体はすでに保持しており、条件設定ができれば染色は比較的速やかに施行できると考える。実験の進行に伴い対象とする蛋白質は多少の変更があるかもしれない。
|
次年度使用額が生じた理由 |
10月に科研費が採用されたため当初より半年分の研究期間が短縮された。そのため研究が半年分遅れて次年度使用額が生じた。あと2年研究期間が残っているため、研究全体の遂行に関しては問題ないと考える。
|
次年度使用額の使用計画 |
BRAFの変異を測定するためのPCRの試薬購入に使用予定である。また免疫染色のためにSodium Iodide Symporter、Glucose Transporter 1(GLUT1),Lactate Dehydrogenase A(LDHA), Monocarboxylate Transporter 4(MCT4), Fatty acid synthetase(FAS), Ki-67に対する抗体を購入予定である。また免疫染色を施行するにあたって必要な試薬、物品も購入予定である。
|