研究課題
当院において甲状腺癌のサンプリングは開始し、同時にPET施設と連絡をとり、画像解析を行えるシステムの構築をした。また画像解析ソフトを購入し画像解析ができる状況とした。前医での甲状腺癌に関しては画像解析はすでに施行しており、PETから得られるパラメーターを購入した画像解析ソフトにて行っている。その結果FDGの高集積を治療前に認めている症例の方が再発転移のリスクが高く、さらには今まで解析されていたSUVの最大値よりも容積をもとにしたパラメータの方がより予後を予測する能力は高い結果であった。また無病再発生存率に関してカプランマイヤー法を用いて生存曲線を描くと有意差をもってSUVmaxが高値の群の方が予後不良であるとの結果であった。またコックスの比例ハザードモデルを用いてハザード比を算出した結果、以前からハイリスクとされていた腫瘍径、T分類、N分類より容積をベースとしたパラメータの方がハザード比が高いという結果となった。これらより甲状腺癌における、FDGの集積や不均一性は予後と相関しており、これを用いて治療前に予後予測が可能であることを示唆した。さらに不均一性に関しのパラメータの方が予後予測能力が高い結果であった。癌自体は不均一性を有しているが、不均一性が高い方が再発転移をする可能性が高いことを示唆する結果であった。今後はこの結果と合わせて、好気性代謝、嫌気性代謝に関しての変化やメカニズムを実際の癌の組織の中で確認する予定である。扁平上皮癌と違い、甲状腺乳頭癌においてはグルコースを多く取り込むものだけが存在するのではなく、様々なグルコースの取り込みレベルを持った癌種が存在することを示唆した。この違いをさらに探求していきたい。
3: やや遅れている
概ね順調には経過しているが医局人事のため、研究者の所属が変わったため、若干研究の進むスピードが一時的に低下した。しかし順調に対象となる症例は増加しており、今後十分完遂できると考えている。
解析対象の画像データの不均一性等を解析を行う。この集積の程度に違いや不均一性が細胞レベルでどのようなメカニズムになっているか解析を行う。そのために対象の臨床検体を薄切し、免疫染色を糖代謝に関する抗体を用いて行う予定としている。その結果を踏まえて統計解析を行う予定としている。パラフィンブロックよりDNAを抽出し、BRAFの変異の確認を行う。パラフィンブロックを薄切し、免疫染色を行う。対象とするものはヨードの取り込みのトランスポーターであるSodium Iodide Symporter、癌においてブドウ糖の取り込みに一番関与しているトランスポーターであるGlucose Transporter 1(GLUT1), 嫌気性代謝に関与しているLactate Dehydrogenase A(LDHA), 乳酸を細胞外に排出するトランスポーターであるMonocarboxylate Transporter 4(MCT4), 好気性代謝に関与しているFatty acid synthetase(FAS),細胞周期関連蛋白質であり癌の増殖能力とも関連しているとされるKi-67を想定している。また可能であればメタボリズムに関しても検討したい。
(理由)一昨年が10月に科研費が採用されたため当初より半年分の研究期間が短縮された。そのため研究が半年分遅れて次年度使用額が生じた。その分の繰り越しがそのまま残った形となった。昨年はほぼ計画通り使用した。(使用計画)免疫染色を施行するにあたって必要な試薬、物品を購入予定である。また学会発表、論文作成のために使用する予定である。
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