グルコシルセラミドは、様々な領域のがん細胞に対して、殺細胞効果を示すことが知られており、我々も動物実験において、頭頸部癌細胞に対する腫瘍増殖抑制効果を報告している。一方頭頸部癌における予後不良の因子としては、再発および重複癌があり、これらを制御することが予後の改善につながると考えられる。本研究では、食品(米糠)から抽出したグルコシルセラミドに発癌抑制効果があるか検討した。 CB6F1-Tg rasH2@Jclマウス40匹を2群に分け、両群に4-nitroquinoline 1-oxideを24週間飲水に混入した上で、治療群のみグルコシルセラミドを食餌に混入し投与した。24週後、マウスを犠牲死させ、口腔、咽頭、食道における腫瘍形成を評価した。評価方法としては、それぞれの腫瘍から病理標本を作成し、正常組織、上皮内癌、扁平上皮癌に分類して計測した。 治療群に比べて、コントロール群では、上皮内癌、扁平上皮癌共に口腔、咽頭、食道において腫瘍を生じたマウスが多く認められた。同様に治療群に比べて、コントロール群では、上皮内癌、扁平上皮癌共に口腔、咽頭、食道において優位な腫瘍増殖数を認めた。 米糠由来のグルコシルセラミドは、頭頸部扁平上皮癌に対する発がん効果を示したことが示唆された。本物質は、食品由来であり、安全に服用することが可能であり、有効な発がん抑制物質となりうることが示唆された。 本研究結果は、すでに国際雑誌に投稿した。また、現在、ヒトにおいて米ぬか由来のグルコシルセラミドの臨床研究を開始しており、今後ヒトに対する頭頸部癌発がん抑制に貢献する物質であることを検証する。
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