研究課題/領域番号 |
16K11234
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
鵜久森 徹 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (80512128)
|
研究分担者 |
矢野 元 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (00284414)
岡田 昌浩 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20512130)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 転移誘導因子 |
研究実績の概要 |
がんの脅威はその転移によるところが大きい。これに対して細胞増殖の抑制を宿命として背負う我々のような多細胞生物は、組織構築の破綻を防ぎがんの進行に対して制限をかける多くの機構をもっている。そのためがん細胞といえど転移を成功させることは容易ではなく、実際に転移先臓器においてマクロの転移巣の形成にいたるものは、潜在的に転移機能を持つ細胞のうちわずか0.02%にとどまるとの算出もなされている。こうした中で転移に成功するがん細胞は、転移に先立ち転移標的となる組織を転移に適した状態に誘導・改変し、防御系細胞からの排除を逃れると考えられる事例が示されてきている。申請者らの研究グループはこれまでに、高転移性ヒト口腔扁平上皮がん細胞SASL1mを用いたリンパ節転移モデルを構築し、腫瘍原発巣から遠隔の転移標的リンパ節に対する働きかけについて検討してきた。その結果、腫瘍細胞が転移に先立って標的臓器の組織構築を転移に好適なものに改変する液性因子を分泌することを突き止め、パスウェイ解析と組み合わせたアレイ解から、候補物質としてリジルオキシダーゼ様酵素2(LOXL2)、TGFβ1ら四つの因子を見出し報告した。さらにこのLOXL2が蛋白質としても転移性扁平上皮がん細胞から特異的に分泌さていることと、それがエクソソーム分画に存在することを見出した。申請者らは現在までに、頭頸部がん患者の血清中のエクソソーム分画からLOXL2検出に成功している。この解析には「検出されLOXL2量が、健常者と比較して転移リスクを持つ患者血清において高いという仮説」をもって臨んだが、リンパ節転移を持つ症例についてLOXL2高発現を認めたことに加え、転移を持たない初期がんには低発現を認めた。また、健常者との比較では有意差をもってがん患者に高発現を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者とがん患者との間で血清LOXL2有意差を確認できた。
喉頭がんの切除標本において組織中のLOXL2発現と予後に相関があったという報告があり、我々も舌癌切除標本のLOXL2染色してみたところ、がん細胞が浸潤していっている部分に染色が強い像が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き耳鼻咽喉科を受診している扁平上皮がん患者および健常者について、ヒト検体の収集とエクソソーム画分の調製を行い、エクソソーム蛋白質あたりの LOXL2 量をイムノプロット法により逐次測定する。データの収集に時間を要することが予想されるため、この作業自体は初年度から始めておき、解析を次年度以降に行う。患者の予後についても追跡することに留意し、次年度以降の解析項目とする 。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 実験器具の購入予定予定であったが未購入であったため (使用計画) 前年度未購入であった実験器具の購入を行う
|