ホスホリルコリンの二相作用を応用した新たな粘膜ワクチンの開発

2018 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16K11239
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 黒野 祐一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (80153427)
• 研究分担者: 大堀 純一郎 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (90507162) ; 永野 広海 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (60613148) ; 原田 みずえ 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (20585103) [辞退] ; 宮下 圭一 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (30585063) ; 牧瀬 高穂 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (30585120) ; 井内 寛之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90645285) ; 地村 友宏 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (10709596)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: ホスホリルコリン / 粘膜ワクチン / アレルギー性鼻炎 / 抗PC抗体 / 肺炎球菌 / インフルエンザ菌 / 細菌接着 / 二相作用

研究実績の概要

1）ホスホリルコリン（PC）舌下投与によるアレルギー性鼻炎症状の抑制：PC-KLHの舌下投与によるOVA特異的IgE産生およびアレルギー性鼻炎症状の抑制効果を観察したところ、経鼻投与と同様の効果が認められた。しかし、CD4陽性細胞からのサイトカイン産生プロフィールが異なり、舌下免疫では制御性T細胞の作用によってアレルギー性炎症が抑制されると推測された。
2）PCの抗炎症作用に関する研究：PC特異的免疫応答の抗炎症作用を観察するため、IgA腎症および急性喉頭蓋炎などの重症急性上気道感染症におけるPC特異的免疫グロブリンの役割を検討した。その結果、IgA腎症では予後良好群で扁桃におけるPC特異的IgM産生細胞が有意に多く、また、急性上気道感染症では、CRP値が低い症例の血清中PC特異的IgMが高値であった。すなわち、PC特異的IgMは抗炎症作用を有し、PCワクチンによってこの抗体活性を増強することで、種々の炎症反応を抑制できると考えられた。
3）PCによる細菌接着の抑制作用：ヒト培養上皮細胞をPC-KLH、抗血小板活性化因子（PAF）受容体抗体で処理、あるいは肺炎球菌およびインフルエンザ菌を抗PC抗体で処理したのちに、両細菌の上皮細胞への接着そして細胞内侵入を観察した。その結果、PCを高発現する肺炎球菌およびインフルエンザ菌の細胞接着、さらにインフルエンザ菌の細胞内侵入が上皮細胞ならびに細菌の前処理によって有意に抑制された。したがって、PCの発現が強い高病原性の細菌では、その上皮細胞への接着そして細胞内侵入にPCとPAF受容体の結合が関与しており、PCの投与が直接的にこれを阻止すると推測された。これらの研究結果から、PCはワクチンとして免疫応答を誘導するとともに、上皮へ直接作用して感染症を予防すること、すなわち、その二相作用が示された。

研究成果

• [雑誌論文] Intranasal immunization with phosphorylcholine suppresses allergic rhinitis in mice (2018)
  • 著者名/発表者名: Keiichi Miyashita,MD, Junichiro Ohori,MD,PhD, Hiromi Nagano, MD, Satoshi Fukuyama,MD, PhD, Yuichi Kurono, MD,PhD
  • 雑誌名: The Laryngoscope 巻: 128(7) ページ: E234-E240
  • DOI: 10.1002/lary.27030
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Mucosal and systemic immune response to sublingual or intranasal immunization with phosphorylcholine (2018)
  • 著者名/発表者名: Maseda Yoshiko、Ohori Junichiro、Tanaka Norimitsu、Nagano Hiromi、Miyashita Keiichi、Kurono Yuichi
  • 雑誌名: Auris Nasus Larynx 巻: 45 ページ: 273～280
  • DOI: 10.1016/j.anl.2017.04.009
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Role of phosphorylcholine in Streptococcus pneumoniae and nontypeable Haemophilus influenzae adherence to epithelial cells (2018)
  • 著者名/発表者名: Hiroyuki Iuchi, Junichiro Ohori, Takayuki Kyutoku, Kotoko Ito, Yuichi Kurono
  • 雑誌名: Auris Nasus Larynx. 巻: Nov 29 ページ: 2537-2543
  • DOI: 10.1016/j.anl.2018.11.003.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] The role of phosphorylcholine-specific immune responses in the tonsils and peripheral blood on IgA nephropathy (2018)
  • 著者名/発表者名: Ohori J, Jimura T, Kurono Y.
  • 雑誌名: Acta Otolaryngology 巻: 138(12) ページ: 1099-1104
  • DOI: 10.1080/00016489.2018.1522450.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 結合化ホスホリルコリン重合体の粘膜アジュバント効果 (2019)
  • 著者名/発表者名: 地村友宏
  • 学会等名: 第３７回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
• [学会発表] The role of phosphorylcholine in the adherence of Streptococus pneumoniae and nontypeable Haemophilus influenzae (2018)
  • 著者名/発表者名: M.Iuchi
  • 学会等名: Seven Departments joint meeting of Otolaryngology 2018
  • 国際学会
• [学会発表] Differences in immune responses induced by intranasal administration with phosphorylcholine together with poly(I;C) and that with CT as mucosal adjuvant (2018)
  • 著者名/発表者名: T.Jimura
  • 学会等名: Seven Departments joint meeting of Otolaryngology 2018
  • 国際学会
• [学会発表] 肺炎球菌およびインフルエンザ菌の上皮細胞接着に対するホスホリルコリン重合体の阻害効果 (2018)
  • 著者名/発表者名: 井内寛之
  • 学会等名: 第６回日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会総会・学術講演会
• [学会発表] ホスホリルコリン経鼻免疫応答におけるコレラトキシンとPoly(I;C)のアジュバント効果の相違 (2018)
  • 著者名/発表者名: 地村友宏
  • 学会等名: 第５７回日本鼻科学会総会・学術講演会
• [学会発表] ホスホリルコリン舌下免疫によるアレルギー性鼻炎の抑制 (2018)
  • 著者名/発表者名: 牧瀬高穂
  • 学会等名: 第５７回日本鼻科学会総会・学術講演会