本研究はヒト乳頭腫ウイルス(Human papillomavirus:HPV)関連中咽頭癌の発癌における口腔内マイクロバイオームの関与を検討することを目的としている.方法として①HPV感染のある中咽頭癌(HPV関連中咽頭癌)群,②HPV感染のない中咽頭癌(従来型中咽頭癌)群,③非患者群に対して口腔内の菌叢構造解析を行い,各群での口腔内マイクロバイオームの系統組成とその機能組成を比較を行う.
平成28-29年度ではHPV関連中咽頭癌と従来型中咽頭癌の鑑別を明確にする目的で,中咽頭癌におけるHPVの複数の検出法について既報に基づいた検証を行い,HPV関連中咽頭癌をHPV DNA in situ hybridization陽性かつp16INKa免疫組織化学染色陽性(70%以上),従来型中咽頭癌をHPV DNA in situ hybridization陰性かつp16INKa免疫組織化学染色陰性(70%以上)と定義し,該当する患者の唾液採取を行ったが,マイクロバイオームの解析に必要な検体数に至らなかった.
平成30年度では,HPV関連中咽頭癌の亜群を明確化しマイクロバイオーム解析における詳細な比較に結びつける目的で,平成29年度に改訂されたAJCC/UICC TNM分類 第8版に基づき,当施設におけるHPV関連中咽頭癌患者を後方視的に再分類し,新しいTNM分類がHPV関連中咽頭癌患者の転帰を予測できるかについて検討した.またマイクロバイオームの系統組成とその機能組成がHPV関連中咽頭癌の細胞内の動態に影響を与えているかを検証するための予備実験として,HPV関連中咽頭癌と従来型中咽頭癌における遺伝子発現やマイクロRNA発現の差異につき検討した.今後は必要検体数が揃い次第マイクロバイオーム解析を行い,平成30年度の結果を踏まえた比較検討を行う予定である.
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