研究課題
喉頭機能温存手術Supracricoid Laryngectomy with Cricohyoidoepiglottopexy(SCL-CHEP)を1997年に北里大学で導入してから23年が経過した。手術後の喉頭機能を支えるメカニズムを解析し、より良好な喉頭機能を目指した臨床的介入に反映してきた。今回の基盤研究では、SCL-CHEPの長期予後について包括的に検討した。1)長期予後の臨床的解析と病理所見の関連性の解析では、SCL-CHEPの根治性高さが形態学的に実証され、長期経過しても良好な成績を示した。2)嚥下機能の長期経過の解析では、長期生存例でも嚥下機能の低下を示さず、誤嚥性肺炎などで喉頭全摘出術などによる追加介入を必要とした症例は認められなかった。3)音声機能の長期経過の観察では、粗造性の音声ではあるが、音質、声量共に低下し、会話が不可能になることも観察されなかった。これら3つの研究プロジェクトを通して、SCL-CHEPの腫瘍学的安定性、獲得音声・嚥下機能の安定性など、本喉頭機能温存手術の潜在性が確認できた。一方、SCL-CHEPのOpen手術としての高い侵襲性、続く長期に及ぶ術後回復期間、などの新たな課題も表面化し、本術式の低侵襲化に向けた革新的な取り組みが必要であることもわかった。低侵襲の喉頭亜全摘出術の開発に着手している。また、現在咽喉頭手術で使用する自在性の高い弯曲回転鉗子の開発にも取り組んでいる。神経同定機器の研究も開始している。今後の革新的研究に向けた取り組みを継続したいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Japanese Journal of Clinical Oncology
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