研究実績の概要 |
1) E-cadherin(E-cad)低発現咽頭扁平上皮癌細胞に対するCox2及びEP2(PGE2受容体)の選択的阻害により,E-cad発現増強を伴うEMT抑制(MET誘導)を介した抗腫瘍効果が得られた。下咽頭癌切除標本の組織学的検討および統計解析より,頸部LN転移におけるE-cad発現低下とCox2発現亢進の関与が強く示唆された。 2) 咽頭扁平上皮癌細胞に対する低酸素誘導因子HIF-1αの選択的阻害(KC7F2使用)は,用量依存的な細胞増殖抑制に加え,EMT誘導および幹細胞形質の関連転写因子(twist, Oct3/4, Nanog)の発現抑制を示した。下咽頭癌切除標本の免疫組織化学的検討において,HIF-1α高発現はT stage,頸部LN転移,リンパ管浸潤と有意に相関していた。 3) TPF化学療法を施行した進行頭頸部扁平上皮癌50例を対象に,1コース目における発熱性好中球減少症(FN)の発症予測因子について,治療前の血液生化学的指標を含めて網羅的な統計学的検討を行った。FN発症率は24%で,単変量解析では治療前の白血球数・好中球数・単球数に有意差を認めた。多変量解析の結果,治療前単球数低値(<370/μL)がFN発症の独立予測因子(OR=6.000,p=0.017)であった。 4) 一次治療として放射線治療を施行した喉頭下咽頭癌84症例を対象に,治療前のPET-CT診断における原発巣のSUVmax値を含めて生存分析を行った。多変量解析の結果,原発巣SUVmax値はDFS: 無病生存率(cut-off値=7.3, HR=2.730, p=0.026),およびOS: 全生存率(cut-off値=8.7, HR=5.609, p=0.012)のいずれにおいても独立予後因子であった。
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