研究実績の概要 |
1) 咽頭扁平上皮癌細胞に対する低酸素誘導因子HIF-1αの選択的阻害(KC7F2使用)を行った結果,用量依存的な細胞増殖抑制に加え,EMT誘導および幹細胞形質の関連転写因子の発現抑制を介した抗腫瘍効果が示唆された。下咽頭癌切除標本の免疫組織化学的検討において,HIF-1α高発現はT stage,頸部LN転移,リンパ管浸潤との間に有意な相関を示したことより,上記の機序を介して病変進行に寄与していると考えられた。 2) 咽頭扁平上皮癌細胞株に対する選択的なCox2阻害(celecoxib使用)およびPGE2受容体であるEP2阻害(PF-04418948使用)は,幹細胞関連因子の発現抑制,およびanchorage-independentな細胞増殖能を反映するsphere formationの減弱を示したことから,stemness propertyの抑制効果が確認された。中下咽頭癌の生検および導入化学療法後の切除検体を用いた免疫組織化学的検討において,治療前のCox2発現と導入化療による組織学的効果は逆相関を示した。 3) 中咽頭扁平上皮癌患者78名を対象に,p16発現を含めた疾患因子に加え,宿主因子として種々の血液学的な栄養・免疫・炎症の指標の予後予測能を多変量解析にて検討した結果,OSではHb (HR= 2.77, p=0.046), PNI (HR=6.08, p=0.022), PI (HR=3.50, p=0.0003), PFSでは年齢(HR=2.77, p=0.007), NLR (HR=3.29, p=0.022), PI (HR=2.89, p=0.0001)が独立した予後因子であった。中咽頭癌の治療方針決定に際し,予め癌に伴う炎症・免疫低下・低栄養を評価することの有用性が示唆された。
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