研究課題/領域番号 |
16K11249
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
河田 了 大阪医科大学, 医学部, 教授 (40224787)
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研究分担者 |
栗栖 義賢 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (30319529)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 耳下腺癌 / バイオマーカー / 悪性度 / 生存率 / リンパ節転移 / HER2 / AR / EGFR |
研究実績の概要 |
耳下腺癌は比較的まれな癌腫である。2005年WHO唾液腺腫瘍病理組織分類によると、耳下腺癌は23の組織型に分類され、さらに多くの組織亜型が存在してそれぞれ悪性度が異なっている。改訂2017年分類でも大差はない。耳下腺癌は症例数が少ないため、各種バイオマーカーの発現と組織型、悪性度あるいは予後との関係は未だ不明である。そこで本研究では、耳下腺癌の組織別悪性度分類を検討した上で、各種バイオマーカーの発現を検討し、耳下腺癌の組織型、悪性度、予後との関係をみる。本研究を基礎に機能的温存が強く求められる耳下腺癌に対して個別化治療の可能性を探求する。 1999年から2017年まで当科で加療を施行した耳下腺癌新鮮症例は184例について、臨床的データを整理した。その結果、T分類別ではT1が25例、T2が82例、T3が25例、T4が52例であった。リンパ節転移陽性例は48例であった。184例のステージ別ではステージⅠが22例、Ⅱが71例、Ⅲが23例、Ⅳが68例であった。組織学的悪性度別にみると、低悪性が18例、中悪性が87例、高悪性が79例であった。主な組織型はMucoepideomoid carcinomaが47例、carcinoma ex pleomorphic adenomaが27例、adenoid cystic carcinomaが21例、salivary duct carcinomaが15例、acinic cell carcinomaが11例であった。 悪性度バイオマーカーについては転帰が明らかになっている107例について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1999年から2017年まで当科で加療を施行した耳下腺癌新鮮症例は184例について、臨床的データを整理した。その結果、T分類別ではT1が25例、T2が82例、T3が25例、T4が52例であった。リンパ節手転移陽性例は43例であった。166例のステージ別ではステージⅠが22例、Ⅱが71例、Ⅲが23例、Ⅳが68例であった。組織学的悪性度別にみると、低悪性が18例、中悪性が87例、高悪性が79例であった。疾患特異的5年生存率は79.0%であり、ステージ別ではステージ1が100%、2が97.6%、3が71.3%、4が53.1%であった。N分類別ではN0が86.8%、N1が71.1%、N2が35.5%であった。悪性度バイオマーカーについては転帰が明らかになっている107例についてまず検討することにした。HER2、AR、EGFRについて免疫組織学的に検討した。HER2は陽性例が15例、陰性例が92例であった。ARは陽性例が15例、陰性例が92例であった。EGFRは陽性例が69例、陰性例が34例であった。それぞれ陽性、陰性について疾患特異的5年生存率を検討したところ、HER2陽性では57.0%、陰性では95.6%、AR陽性では67.1%、陰性で93.8%、EGFR陽性で85.0%、陰性で96.7%であった。HER2陽性およびAR陽性で有意に生存率が不良であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目の進捗としては概ね順調であると考える。今後悪性度バイオマーカーについて臨床的データとすり合わせることにしている。新症例が年間20例程度あり症例数を積み上げる予定である。今年度からPD-L1抗体の発現についても検討を開始し、約60例について免疫組織学的検討を行った。現在生存率等との関連を検討中である。最終目標としては、悪性度バイオマーカーが生存率について有意差がでたものについて、臨床応用の可能性を追求する予定である。
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