研究課題
マウス口腔粘膜で条件的にYAP1蛋白を活性化することにより数週間程度で口腔癌を発がんするモデルの作成に成功した。本モデルは遺伝子変異やcarcinogenによらないepigenetic機構による発癌モデルと考えられる。マウス口腔粘膜上皮から単離した培養細胞および、ヒト舌癌培養細胞、ヒト舌癌臨床標本の解析から以下の様な知見を得た。YAP活性化は口腔発がん・進化の全般的な過程において、癌細胞に特徴的なホールマークの維持に必要であることが明らかになった。臨床標本の解析では、YAP1蛋白の活性化は、正常上皮基底層の幹細胞・前駆細胞から始まり、上皮内癌、浸潤がんと進行するにつれて、腫瘍全体に広がっていくことが明らかになった。YAP蛋白高発現患者の予後は有意に不良であった。マウス発がんモデルの解析から得られたYAP1標的遺伝子moduleの活性は頭頸部癌患者のTCGA public dataにおいて、有意に患者の予後を不良とすることが明らかになった。Chip-seqの結果からマウス発がんモデルにおいてゲノムワイドなクロマチン構造の変化は認められず、逆にYAP1標的遺伝子のエンハンサーは恒常的に活性化されていることが示唆された。頭頸部癌において最も普遍的に見られるTP53遺伝子変異による発癌メカニズの本態は長きにわたって不明であったが、p53蛋白の不活化によるYAP 蛋白の活性化が本発癌経路の重要なファクターである可能性を見いだした。また頭頸部癌の幹細胞性の誘導にYAP1とSOX2のinteractionが重要であることも明らかにした。
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Oral Oncol
巻: 90 ページ: 30-37
10.1016/j.oraloncology.2019.01.015