研究実績の概要 |
化学放射線療法や再建手術などの集学的な治療法が進歩した現在でも、進行頭頸部癌治療の中心は手術であり、進行頭頸部癌の予後及びQOLはここ20年間大きな改善をみていない。近年の分子生物学的観点からは、癌幹細胞(CSC)が固形癌の予後を不良とする因子として注目されているが、頭頸部癌のCSC維持誘導のメカニズムは明らかになっていない。最近のwhole-exome sequence研究(Science 2011他)及びTCGAのパブリックデ-タにより、頭頸部癌には優位な癌遺伝子のgain-of-function mutationがないことが明らかになった。さらに、癌の発生・進化にはepigeneticな機構が大きく関与する事も明らかになっている。頭頸部扁平上皮癌では、周囲環境からのストレスに反応し、epigeneticに多分化能(pluripotency)を獲得したCSCへのreprogrammingが重要な要素であると考えている。 過去の報告及び我々のTCGA解析によると、Sox2は頭頸部癌幹細胞化に必要な有力な遺伝子と考えており、これをノックダウンあるいは導入した細胞株の表現型を解析し、それぞれの細胞株を比較することで頭頸部癌におけるエピジェネティック機構を解析する方針である。 各種頭頸部癌細胞株(HSC3, HSC4, SAS, OSC19, OSC20, SCC4, SCC9, Cal27, FaDu, SCCKN)でSox2発現の大きいHSC4を確認した。この細胞株に対し、RNAiを用いてSOX2をノックダウンさせ、解析中である。wound healing assayではノックダウン株でhealingが低下していた。この細胞を用いての解析を継続中です。
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