研究実績の概要 |
昨年度は黄斑疾患症例データベースを用いて、加齢黄斑変性の治療薬と視力予後との関連に関し、観察研究における解析を行った。現在多施設症例データによる統合的解析を検討中である。平成29年度については観察研究データを用いたより複雑な要因モデルへの検討を行った。すなわち黄斑疾患に対しては現在薬物療法が行われているが、再発・再治療を必要とすることが多い。しかしこのような再発・再治療を要する疾患・治療の検証モデルについては検討が乏しい。今回、難治性黄斑疾患のひとつである近視性脈絡膜新生血管(mCNV)に対する抗VEGF療法に注目した。本治療は、再発の可能性を考慮してpro re nata (PRN)投与が一般的である。しかし無再発状態が続いた際の妥当な診察間隔の検討はなされていない。今回我々は「ある期間再発しなければその後どの程度の無再発期間を期待できるか」について後向き検討を行った。治療開始後初めて滲出変化が消失した最終の投与日より再発するまでの無再発期間を調査し、生存分析を用いて無再発率を求めた。治療前背景因子(年齢、性別、投与薬、初診視力、等価球面度数)と無再発率との関連を解析した。求めた無再発率を用いて“nヶ月再発なし”を条件とした、さらにmヶ月後の無再発率P(n+m|n)を推定した。生存分析を用いた無再発率は6ヶ月で81.7%、1年で77.4%、2年で70.6%。無再発率に有意に関与する背景因子は無かった。n=1,3,6,および7、かつm=3におけるP(n+m|n)は、各々0.86, 0.91, 0.95 および0.97であった。すなわち無再発は治療開始時には予測は困難であるが、7ヶ月程度の無再発期間のもとでは診察間隔を延長できる可能性が示唆された。このように無再発率の推定および妥当な診察間隔の検討に際して本解析手法が参考になりうると考えられた。
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