我々は観察研究における新規解析法の開発のため、病的近視合併新生血管黄斑症(myopic CNV)に着目した。当疾患では発症後直ちに血管新生阻害薬を投与すれば効果が高いものの、再発の可能性があり、かつ再発までの期間は予測困難であった。そのため再発が無いことを確認するための頻回の定期通院が患者および医療施設に大きな負担となっていた。我々は昨年度myopic CNV症例(n=50)の再発までの期間についてレトロスペクティブに解析し、まず癌疾患の臨床でよく用いられるサバイバー生存率を算出することで、無再発期間がその後の再発リスクにどのように関連するかを示した。今年度はさらに生存解析を用いて再発モデルを作成することを試みた。まずカプランマイヤー生存曲線を算出し、再発率は長期無再発後も0とはならないものの再発頻度は低くなることを発見した。次にパラメトリック分析を行った。すなわち今回のデータをパラメトリックモデルで近似したところ、経時的な再発様式に興味深い特徴があることが示唆された。これは複数の分布モデルにより確認された。この知見はmyopic CNVの経過観察計画立案に寄与するだけでなく、本疾患の発症・再発の病態メカニズムを理解するさいにも参考となると考えられた。現在この知見について論文投稿中である。今後はさらに多数症例により詳細な再発モデルを作成するとともに、同様の解析手法を、血管新生阻害薬にて加療される他の疾患(加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、ほか)に適用することで、診療計画策定に資する知見を得るだけでなく、各種疾患の病態生理の違いを新しい観点から考察していく。
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