研究実績の概要 |
眼圧日内変動は緑内障の発症・進行に影響し、治療方針決定に重要である。緑内障患者では正常人よりも変動幅が大きく、変動パターンが多様である。一方、眼圧日内変動は概日リズムを呈する生体現象の一つであり、我々は概日リズムを発振する時計遺伝子であるCry1Cry2が眼圧日内変動形成に不可欠であることを初めて報告した。しかし、時計遺伝子が眼圧日内変動を形成する機序は現在のところ不明である。本研究では無治療広義原発開放隅角緑内障(POAG)の眼圧日内変動をコンタクトレンズセンサー(Triggerfish, CLS)によって詳細に検討し、CLS日内変動パターンについて関連する臨床パラメータの探索と時計遺伝子の遺伝子多型(SNP)との関連性を調べた。 研究期間内に無治療広義POAG 83例83眼に対してCLS測定を施行した(目標症例数100例)。コサイン近似したCLS変動パターンのパラメータの中で、頂点相が視野MD値と負の相関があること、CLSパラメータと前日の眼圧値を組み合わせることが眼圧日内変動予測に有用であることを報告した。CLSと24時間血圧計の同時測定を行った症例では、平均血圧がCLS測定値に有意な正の関連を示すことを報告した。 時計遺伝子群7遺伝子(BMAL1, CLOCK, PER1, PER2, PER3, CRY1, CRY2)の17SNPについてDNAシークエンシングによる遺伝子型のタイピングを施行し、CLSとSNPともに解析可能であった67例において、PER2遺伝子のrs2304672のminor allele carrierではCLS頂点相が有意に遅かった。 以上のように、本研究によって広義POAGにおいてCLS測定は緑内障診療に有用な情報を提供できる可能性があること、CLS変動パターンに時計遺伝子であるPER2のSNPが関連していることを明らかにすることができた。
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