研究課題/領域番号 |
16K11263
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
飯島 裕幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80114362)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 網膜静脈分枝閉塞症 / 視細胞障害 / 静的自動視野計 / 黄斑浮腫 / 光干渉断層計 / 眼底自発蛍光 / 光干渉断層血管撮影 |
研究実績の概要 |
網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に伴う黄斑浮腫では、抗VEGF剤硝子体注射によって黄斑浮腫が改善し、その結果、視力改善する例は多い。しかし一方で浮腫消退後にも視力障害が残る例も少なくない。その原因の一部には網膜内層虚血による、双極細胞、神経節細胞の障害が考えられる。ハンフリー視野中心30-2で得られた視野感度すなわち光覚感度が、視野結果に対応させたフルオレセイン蛍光造影写真(FA)での無血管野(NPA)の毛細血管脱落程度に相関することを報告した。しかしこれは視力に関わる中心窩の機能ではなく、中心窩外網膜機能である。中心窩の機能である最高矯正視力は黄斑浮腫によって低下するが、その機序として1. 黄斑浮腫自体による視細胞軸索の神経伝導障害、2. 視細胞障害、3. 網膜内層の虚血性障害が考えられる。 1の黄斑浮腫自体による視力障害は可逆性で、黄斑浮腫が減少すれば、視力は改善するが、再発を繰り返すとある程度浮腫による網膜厚増大が残存していても、視力が正常化する。このことは抗VEGF剤硝子体注射治療において臨床現場で認識すべき知識である。2の視細胞障害は黄斑浮腫が消退しても視力が改善しないので不可逆性変化と考えられているが、数年以上の長期間でみると改善する症例もみられる。これは視細胞の細胞体である外顆粒層が保存されて内節外節を示すellipsoid zoneのみの障害の場合にこれが長期間で回復することと関連する。3の網膜内層の虚血性障害は、中心窩につながる乳頭黄斑線維束で生じた場合には不可逆性視力障害の原因となる。以上を支持する内容を臨床データから示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
黄斑浮腫合併BRVO眼に対しては、現在、標準的に抗VEGF剤硝子体注射治療を行い、長期に経過を観察できる症例が集まってきている。またそのような例で、出血が十分に吸収した時点で、光干渉断層血管撮影法(OCTA)を行い、乳頭黄斑線維束領域の虚血程度を評価している。 また視細胞障害例ではOCTでのエリプソイドゾーン健全性の評価以外に眼底自発蛍光(FAF)低蛍光による評価症例が蓄積されてきている。 これら集積されたデータを多変量解析で検討すれば、BRVO眼黄斑浮腫の長期視力予後決定因子を明らかにできる。
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今後の研究の推進方策 |
集積された対象の臨床検査データを整理して、多変量解析を行う。 内層虚血のない、浮腫消退眼だけでなく、一部虚血あり、浮腫残存症例のデータも用いて多変量解析の手法でBRVO眼黄斑浮腫の長期視力予後決定因子を明らかにする。 また視細胞障害が外節あるいは内節までにとどまり、視細胞核の存在する外顆粒層が正常の厚みを残す眼で視力不良の眼が、3年以上の長期経過で視力が回復してくるかどうかについて長期フォロー例を加えて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定学会に参加できなかったために学会旅費が、当初見込みより少なくなった。平成31年度での旅費、論文作成補助費などに充てる予定である。
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