研究課題/領域番号 |
16K11264
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 美保 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50252242)
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研究分担者 |
彦谷 明子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (80464113)
古森 美和 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (30467245)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水平斜視 / 固定内斜視 |
研究実績の概要 |
斜視があると、 他人と眼をあわせて会話ができないという点で自己評価が低くなり、就職や結婚にとって不利であることが学術的調査によって明らかになった。そして、精神的なストレスから、日常生活におけるQOLが低いことがわかっている。また、斜視は、しばしば耐え難い複視を伴い、日常生活を困難にする。車の運転やコンピュータ作業といった、現代社会に不可欠な業務を安全かつ快適に行うことができないため、適切な時期に斜視の治療が求められる。一方、斜視治療は子供のときにうけるもの、という認識が強く、成人の斜視に対する治療方法はまだ改善されるべき点が多い。近年の画像診断を用いた斜視研究によって、斜視の病態がこれまで以上に多彩であることが明らかとなってきた。外眼筋だけでなく、それを取り巻く眼窩組織の影響が深く関与していることがわかってきた。従来行われなかったタイプの斜視手術が行われるようになるとともに、その手術や術後の眼球に対する影響の評価が必要である。 本研究は斜視手術が眼球にあたえる影響を調査することによって、治療歴の不明な斜視患者の詳細な評価を可能にし、斜視治療成績の向上につなげることが目標である。 斜視手術が眼球に及ぼす影響を評価するために、眼窩画像診断、眼圧、および角膜形状解析をもちいる。 麻痺のない水平斜視、固定内斜視、外転神経麻痺に対して、第一眼位、内転位、外転位でそれぞれ眼圧を測定する。上記患者に対して、前後転術、筋移動術などを行う。斜視手術前後で眼圧の変化を調査する。同様の斜視患者で術前、術後の角膜形状を記録する。 得られた値から統計学的解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外眼筋が眼球に付着する位置を確認するための新しい方法として、前眼部OCTについて検討した。前眼部OCTで角膜輪部から筋付着部までを描出して距離を測定することを試みた。その結果、検者間での一致度が高いこと、手術前に測定した値と術中に測定した値の一致度が高いことを明らかにし論文として発表した。また眼位を変えて記録することによって、測定値に差がでることから、記録に最適な眼位を明らかにした。研究成果を本年度の国内、国際学会で発表し、論文を作成する。 斜視手術を行うことによって、結膜浮腫がおきるが、手術後の経過を前眼部OCTで記録することで細隙灯顕微鏡検査でははっきりしない浮腫、嚢腫の存在があきらかになった。斜視手術による侵襲を記録する方法として有用であると考える。研究成果を本年度の国内、国際学会で発表し、論文を作成する。 さまざまな斜視において眼位を変えて眼圧を測定すると眼圧が変化することを明らかにした。単眼上転制限では麻痺性斜視と下直筋拘縮の鑑別に有用であった。強度近視に合併する固定内斜視で斜視手術後に眼圧が低下することを報告した。麻痺性斜視と非麻痺性斜視、および続発性斜視での手術前後の眼圧の変化を測定した。その結果、筋の拘縮の有無を引っ張り試験なく判定できることが明らかになった。これまでに国内学会で発表し、今後国際学会でも発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
斜視手術による外眼筋付着部変化について前眼部OCTを用いた研究については、引き続き症例の長期経過を観察中である。結果については本年度内に論文として公表する。 斜視手術による結膜浮腫の改善過程については、現在論文作成中である。 角膜形状解析について、本年度、症例収集を行い、解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主な消耗品はデータ解析のためのパーソナルコンピュータと解析のためのソフトウェアである。 それら調達に際し、予定額より安価で購入出来たため1053342円の繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該繰越金については次年度の研究消耗品に充てる予定である。 平成28年度の成果報告を国内外での成果公表のための旅費(国際眼学会、アメリカ小児眼科・斜視学会、ヨーロッパ眼科学会、国際視能訓練学会、日本眼科手術学会、日本臨床眼科学会、日本弱視斜視学会など)および外国雑誌投稿のための校閲費、投稿費、印刷費として使用する。
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