研究課題
緑内障に対する治療は眼圧下降であり薬物療法で十分な眼圧下降効果が得られない場合に緑内障手術治療が行われるが、手術前に手術効果を予測することは困難である。緑内障手術のうち生理的な房水流出路からの房水流出を促進する流出路再建術は低侵襲で安全性が高い反面、眼圧下降効果が限定的であり、その効果は個人差が大きい。この術式では、特定の病型(偽落屑緑内障、ステロイド緑内障)において効果が大きいことが知られており、手術効果に何らかの遺伝要因が影響している可能性がある。緑内障には遺伝的要素が強く関係することが知られており、現在までに緑内障発症に関係する遺伝子がゲノムワイド関連解析の手法を用いて多数報告されている。しかしながら、今までに緑内障手術の効果に影響を与えうる遺伝性因子を検討した報告はない。本研究は、全ゲノム領域を対象に、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism)をマーカーとして関連解析を行うことで、これら遺伝要因を解明することを目的とする。平成29年度は、緑内障関連遺伝子の一塩基多型をマーカーとした遺伝型と、緑内障手術の術後成績との関連を検討した。術後成績としては複数の眼圧基準を用いて生存曲線を作成し、各々の基準と遺伝型との関連を網羅的に検討したが、P<0.05基準で有意となる一塩基多型を認めなかった。今後症例数と検討する遺伝子を追加して本研究を継続する予定である。
2: おおむね順調に進展している
解析に用いる手術不成功の基準として、1. 術後に2回以上連続して眼圧値19mmHg以上、2. 術後に2回以上連続して眼圧値が術前値以上、3. 術後に2回以上連続して眼圧値が術前値×0.8以上、の3通りで検討した。いずれの基準においても、追加で緑内障手術・レーザー治療を要した症例は不成功と定義した。また、術後の緑内障点眼数が術前数を上回ることも死亡の基準の一つとして採用した。上記の方法により、6通りの生存曲線をカプランマイヤー法にて作成し、5遺伝子11個の一塩基多型の遺伝型を用いてログランク検定により生存率曲線の差を検討した。しかしながら、上記の検討において、術後成績に影響する候補遺伝子座の同定には至らなかった。
平成29年度までに新規蓄積を行った症例約150例を追加して、再度、緑内障関連遺伝子群の遺伝型をTaqman法にて決定し、一塩基多型をマーカーとして術後成績との関連を網羅的に検討する。有意水準はP<0.05基準で候補遺伝子の選別を行い、同定された候補遺伝子に関しては引き続きマウス・ラットを用いて眼球内での発現確認実験、およびRT-PCR法にて遺伝子・分子の発現を確認する。また、偽落屑症候群の良好な手術成績を勘案し、同疾患の感受性遺伝子として報告されているLOXL1遺伝子についても、術後成績に関連する遺伝因子として検討を追加する予定である。
平成29年度の研究結果としては有意に関連する候補遺伝子を同定することができなかったため、その後に発現確認実験などに要する経費を要さなかった。次年度の症例数増加と候補遺伝子の追加に加え、同定された候補遺伝子に関する発現確認実験などに経費を使用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 8件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Invest Ophthalmol Vis Sci
巻: 59 ページ: 1995-2004
10.1167/iovs.17-23046
J Glaucoma
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1097/IJG.0000000000000964
Ophthalmology
巻: 125 ページ: e22-e23
10.1016/j.ophtha.2017.10.013
Am J Ophthalmol
巻: 189 ページ: 1-9
10.1016/j.ajo.2018.02.002
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol
巻: 256 ページ: 599-610
10.1007/s00417-017-3874-8
Jpn J Ophthalmol
巻: 62 ページ: 201-208
10.1007/s10384-017-0559-0
巻: 27 ページ: 227-232
10.1097/IJG.0000000000000862
巻: 26 ページ: 851-859
10.1097/IJG.0000000000000768
巻: 182 ページ: 107-117
10.1016/j.ajo.2017.07.011
Sci Rep
巻: 7 ページ: 5019
10.1038/s41598-017-05258-4
巻: 124 ページ: 1403-1411
10.1016/j.ophtha.2017.03.059
巻: 58 ページ: 2510-2519
10.1167/iovs.16-20797