研究実績の概要 |
糖尿病黄斑浮腫に対するVEGF阻害薬であるアフリベルセプトの浮腫形態に基づく導入期投与と、維持期の隔月投与の研究は全症例が1年間の観察経過を終了し、プロトコールで規定した治療法を完了した患者は56名中49名であった。浮腫の消退までに必要な連続投与回数は1回が18例、2回が7例、3回が6例、4回が5例、5回が6例となっており、6回投与しても浮腫の消退が得られなかったのは7例であった。浮腫の軽減後(軽減しない場合は6ヶ月以降)、維持期として2ヶ月ごとに定期投与を施行した結果、1年間の投与回数は平均で7.1回であった。 投与前の平均視力logMAR0.473、1年後の平均視力は0.306であり、平均視力の変化はlogMAR0.167の改善となった。視力改善がlogMAR0.3以上の改善例は15例30.6%。浮腫の改善は平均42.3%の抑制となった。浮腫改善を来たすまでの平均投与回数は2.9回。1回で浮腫が改善した症例は18例、36.7%、6回投与しても改善しなかった症例は7例、14.3%であった。初年度に行った糖尿病黄斑浮腫に対するラニビズマブの浮腫形態に基づく導入期投与と比較して、ややアフリベルセプトより感受性が高く、投与回数の減少が証明できた。 一方、感受性と相関する前房内サイトカインは、VEGF、MCP-1,Il-6,IL-8,ICAM-1の各濃度であり、ラニビズマブと異なっていたのはPlGF濃度に対しても相関を示していた。ラニビズマブがVEGFのみを中和するのに対し、アフリベルセプトはVEGFとPlGFを抑えるため、基礎的な薬理効果が臨床でも認められることが判明した。血流との相関は血流測定系が安定せず、比較対象は出来ないと判断した。
|