研究課題/領域番号 |
16K11278
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 洋 金沢医科大学, 医学部, 教授 (60260840)
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研究分担者 |
初坂 奈津子 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50505352)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 疫学研究 / 紫外線被ばく / 瞼裂斑 / 近視 |
研究実績の概要 |
既存の紫外線蛍光撮影(ultraviolet fluorescence photography; UVFP)を参考にし、再現性が高くかつ容易に移動できる装置を製作した。新UVFP装置はカメラの精度が高く瞼裂斑を容易に抽出でき、角膜横径と合わせることで定量的で、再現性良く、面積はmmの単位で評価可能となった。本調査を行うために、金沢医科大学倫理委員会の規定に基づき委員会から承認を得た。過去の小児から高校生のUVFP調査結果を再解析し、瞼裂斑の所見率や面積を評価した。台湾台南市の中学生222名の右眼所見率は結膜耳側5.9%、鼻側8.1%、高校生371名では耳側9.2%、鼻側10.8%であった。石川県内灘町の中学生312名の右眼所見率は耳側20.5%、鼻側35.6%、高校生235名では耳側11.5%、鼻側16.6%と紫外線の強い台湾に比べて日本人の有所見率が有意に高いことが確認された(p<0.05)。この理由として台南市の中高生の眼鏡使用率が62.2%と日本人中高生40.1%に比べて有意に高く(p<0.05)、UVカット機能のある眼鏡やコンタクトレンズの使用が瞼裂斑発症を抑制する可能性が示唆された。台南市中高生の右眼瞼裂斑面積は耳側3.92±2.81mm2、鼻側4.28±2.39mm2であった。内灘町中高生の右眼瞼裂斑面積は耳側4.04±2.52mm2、鼻側3.79±1.74mm2と瞼裂斑陽性者の面積には大きな差はなかった。今年度は石川県星稜大学スポーツ学科に所属する大学生を対象に眼科検診を行った。問診により小学生から現在までの通学・部活動・レジャーによる戸外活動時間、屋内でのTV・PC・ゲーム・スマートフォン作業による近見作業時間、帽子や眼鏡・コンタクトレンズの使用等詳細な調査を行った。これらの結果から、紫外線被ばくと瞼裂斑の関係、さらに近視発症リスクの検討を現在行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
過去の疫学調査の結果を再解析し、瞼裂斑の有所見率の他に面積の検討も行った。石川県内灘町の中高生に対しては、部活動等の戸外活動時間と瞼裂斑面積の関係を検討し、平均戸外時間が長いほど面積が大きくなる事を確認した。しかし眼部紫外線被ばくとの関連はアンケートの回答を基に対象者の戸外活動時間、眼鏡や帽子の使用頻度等を含めた推定式から眼部紫外線被ばく量を算出していたが、個人レベルの戸外活動時間を精度よく聴取するには難しい事が確認され、再度アンケート内容を見直し本調査での問診内容を検討している。 本調査に必要なUVFP装置の製作を行い、瞼裂斑を再現性良くかつ定量的に評価できるものとし、その精度を確認した。また金沢医科大学倫理委員会の規定に基づき、同意書を作成し委員会から承認を得た。 次年度に行う予定であった大学生に対する調査を今年度に実施した。スポーツを中心に活動している星稜大学スポーツ学科の学生を対象とし、屋外スポーツである野球・サッカー・陸上・テニス・水泳部と屋内スポーツであるバスケットボール・バレーボール・バドミントン・ハンドボール・剣道部の計223名の調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行った星稜大学のデータ解析を行う。小学生から現在までの戸外活動時間を解析し瞼裂斑との関係を検討する。帽子や眼鏡の他にコンタクトレンズ使用についても検討し、コンタクトについてはUVカット機能の有無についても考慮する。さらに屋内での近見作業時間を解析し、近視発症リスクについて解析を行う。 6月と10月に西表島の小学生を対象とした調査を行う。眼部紫外線被ばくと近視の関連を検討するための問診内容を再検討し、信頼性の高い回答につながるものに改良する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入が少なくて済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
本調査の眼科検査に必要な物品を購入する。さらに次年度に行う予定の調査データの解析のため人件費が必要である。
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