研究実績の概要 |
沖縄県西表島の小学生163名の瞼裂斑の調査結果をもとに、UVFPの画像解析により虹彩部を基準とした瞼裂斑の照度比率を検出した。小児が対象となるため、肉眼判定では検出が難しい症例も多い中、比率1.4を基準としそれ以上を瞼裂斑有とすることで、一定の評価が可能となった。発症リスクは、1歳ごとに2.36倍(1.75-3.18, p<0.001)、女児に対して男児が3.39倍(1.32-8.70, p=0.011)であった。 さらに石川県493名、台湾396名、タンザニア108名の小学生の調査結果を再解析し、UV被ばく量としての初期瞼裂斑の比較および近視発症との関係を検討した。UV強度は石川県を基準に、西表島と台北が約1.6倍、タンザニアが2.1倍となる。年齢調整した有病率は、内灘の1.8%に比べ西表島が30.7%、タンザニアが91.0%と有意に高かったが(p<0.01)、台北は4.3%と有意差は認められなかった。ロジスティック回帰分析による年齢・性別を考慮した初期瞼裂斑発症リスクは、内灘に比べ台北が3.4倍、西表島が47.4倍、タンザニアが1242倍となった。一方で眼屈折度数は台北で-1.17±1.68Dと近視傾向がみられるのに対し、西表島では-0.26±1.27D、タンザニアでは0.33±0.97Dであり、台北は2地域に比べ有意に近視度数が強いことが明らかになった。これらの結果から、UV強度が強い地域では小児の初期瞼裂斑有病率は高くなるが、都市部である台北では屋内での活動時間が多くなるため、眼部被ばく量は少なく、有病率も低くなったと考えられる。初期瞼裂斑と近視発症との関係について人種を考慮せずロジスティック回帰分析により検討した結果、初期瞼裂斑の有無に対するリスクは、屈折度数が1D遠視になるにつれて2.47倍(1.74-3.49, p<0.001)となり、眼部UV被ばく量の指標である初期瞼裂斑が見られる児童では近視のリスクが低くなる可能性が示唆された。
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