研究課題/領域番号 |
16K11279
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
神田 敦宏 北海道大学, 医学研究科, 特任講師 (80342707)
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研究分担者 |
喜多 俊介 北海道大学, 薬学研究院, 特任助教 (10702003)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | (プロ)レニン受容体 / 網脈絡膜疾患 / 受容体結合プロレニン系 / レニン・アンジオテンシン系 |
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性や糖尿病網膜症は、主要な中途失明原因の網脈絡膜疾患であり、生活習慣病に合併した慢性炎症性疾患と位置づけられる。しかしながら、未だ根本的な治療法の開発・疾患発症機序の解明には至っていない。これまでに我々は、眼組織レニン・アンジオテンシン系(RAS)が炎症・血管新生病態の上流で網膜疾患の分子病態を制御していることを示した。さらに、我々は組織RASの上流に(プロ)レニン受容体が存在し、プロレニンとの結合が組織RASの活性および(プロ)レニン受容体の細胞内伝達シグナルが網脈絡膜病態を惹起すること[受容体結合プロレニン系(RAPS)] を世界で初めて明らかにした。(プロ)レニン受容体によるこの2つの作用(組織RASの活性化およびRAS非依存型細胞内シグナル活性化)は眼組織のみならず腎臓や心臓などの病態モデルにおいても認められている。また、最近、我々は糖尿病網膜症などの患者より採取した臨床検体を用いた解析の結果、(プロ)レニン受容体は糖尿病網膜症、結膜リンパ腫などにおける疾患の進行に関与する重要な分子であることを示した。本研究課題では、受容体結合プロレニン系の中心に位置する(プロ)レニン受容体を標的にして、網羅的な低分子化合物スクリーニングによる創薬を視野に入れた基盤研究を展開する。さらに疾患動物モデルを用い、(プロ)レニン受容体の機能解明および生理的機能への影響を最小限にしながら慢性炎症病態を抑制する早期介入治療戦略を確立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(プロ)レニン受容体のX線結晶構造解析 大腸菌発現系を用いた(プロ)レニン受容体の発現・精製に成功しており、その初期結晶化を得た。今後は結晶化条件を最適化し、分子置換法など適切な手法を用いて構造決定を行う。構造が得られれば速やかにin silicoスクリーニングを行い、化合物を絞り込む。
低分子化合物ライブラリーからの新規阻害剤スクリーニング これまでに東京大学保有低分子化合物ライブラリー約1万種、北海道大学保有低分子化合物ライブラリー約2千種、既存薬ライブラリー約2千種の合計1.4万種類の低分子化合物のスクリーニングを示差走査型蛍光定量法(Differential Scanning Fluorimetry, DSF)を用いて実施した。さらに、一部化合物に関しては2次スクリーニングも実施した。また、得られたヒット化合物のデータベース検索を行い、類縁化合物評価も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
結晶化に関しては、条件を最適化し、分子置換法など適切な手法を用いて構造決定を行う。 ライブラリースクリーニングでは、昨年度で得られた候補化合物の2・3次スクリーニングをさらに行い、化合物数を絞っていく。その後、誘導体などの合成も行い、特異性の高い化合物を選び出す。可能であれば、培養細胞を用いたin vitroでの評価も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に沿って、研究費は順調に使用されている。予想より化合物ライブラリーの準備などに時間を要したため、一部スクリーニングが行えていない。そのため、少額の研究費が残存したが、次年度の研究費として繰越を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に施行予定であった実験計画や29年度に行う予定の実験費用(細胞培養試薬、抗体、遺伝子発現解析試薬、プラスチック消耗品など)に使用する。
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