研究課題
加齢黄斑変性や糖尿病網膜症は、主要な中途失明原因の網脈絡膜疾患であり、生活習慣病に合併した慢性炎症性疾患と位置づけられる。しかしながら、未だ根 本的な治療法の開発・疾患発症機序の解明には至っていない。さらに、我々は組織RASの上流に(プロ)レニン受容体が存在し、プロレニンとの結合が組織RASの 活性および(プロ)レニン受容体の細胞内伝達シグナル(ERK1/2活性化など)が網脈絡膜病態を惹起すること[受容体結合プロレニン系(RAPS)] を世界で初め て明らかにした。(プロ)レニン受容体によるこの2つの作用(組織RASの活性化およびRAS非依存型細胞内シグナル活性化)は眼組織のみならず腎臓や心臓など の病態モデルにおいても認められている。また、最近、我々は糖尿病網膜症などの患者より採取した臨床検体を用いた解析の結果、(プロ)レニン受容体は糖尿 病網膜症、結膜リンパ腫などにおける疾患の進行に関与する重要な分子であることを示した。本研究課題では、受容体結合プロレニン系の中心に位置する(プ ロ)レニン受容体を標的にして、網羅的な低分子化合物スクリーニングによる創薬を視野に入れた基盤研究を展開する。一方、(プロ)レニン受容体はRAPSの活 性化以外に、ATP依存性プロトンポンプVacuolar H+-ATPaseのアダプタータンパクとしての機能を有することが報告されている。さらに近年、我々の研究で明ら かとなった(プロ)レニン受容体の網膜発生における細胞極性への関与、また糖代謝への関与など生理的機能への影響を最小限にしながら、プロレニンと(プ ロ)レニン受容体の結合阻害薬開発を行い、病態形成機序の解明・病態を抑制する治療戦略の確立を最終目標とする。さらに疾患動物モデルを用い、(プロ)レ ニン受容体の機能解明および生理的機能への影響を最小限にしながら慢性炎症病態を抑制する早期介入治療戦略を確立する。
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