研究課題/領域番号 |
16K11284
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
細野 克博 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60402260)
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研究分担者 |
佐藤 美保 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50252242)
横井 匡 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 感覚器・形態外科部 眼科, 医員 (80514025)
堀田 喜裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90173608)
蓑島 伸生 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (90181966)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 先天性視覚障害 / 遺伝子診断 / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
小児期に発症する眼疾患は先天異常や遺伝性疾患が多い事が特徴である。小児の失明原因の3/4は遺伝性疾患であり、眼形態形成異常(無虹彩、小眼球、コロボーマ)、前眼部疾患(Peters奇形)、水晶体疾患(先天白内障)、網膜疾患(レーバー先天黒内障(LCA)、スターガルト病、家族性滲出性硝子体網膜症、若年性網膜分離症、先天性停止性夜盲、眼振・黄斑低形成)、視神経障害(遺伝性視神経萎縮)など非常に多くの先天性の視覚障害が存在する。 我々はわが国の先天性視覚障害患者に高頻度で変異が認められる原因遺伝子と日本人固有の遺伝子変異を効率よく同定できる診断法を構築し、臨床の場で迅速に遺伝子診断を実施出来る診断プログラムを開発するため検体受取から変異抽出の行程をシステム化することを目標とする。 本年度は、昨年度に引き続き日本の4施設からLCA症例を収集した。結果、新たに収集したLCA症例と合わせて34家系39人のLCAに対して次世代シークエンサーを用いてターゲットシークエンス解析を実施できた。結果、34家系中19家系から疾患原因の可能性の高い変異を検出した。上記解析により56%の日本人LCAから原因変異を同定した。LCAの原因遺伝子以外の原因遺伝子からも変異を検出した。同定した原因遺伝子の中ではCRB1、NMNAT1、RPGRIP1の寄与が高かった。定量PCR法によりLRATの全3エキソン領域の片側アレルが欠失している症例を検出した。原因変異を同定出来なかった症例は全エキソーム解析を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テーラーメード医療をわが国の先天性視覚障害患者に提供する為に、効率の良い遺伝子診断法を構築し、臨床の場において迅速に遺伝子検査ができる診断プログラムの開発を目指す。その為、本年度は以下の研究をした。 (1) 先天性視覚形成障害患児の収集と病態解析による臨床データの集積:4施設より39人のLCAを収集した。各施設の眼科外来では、倫理規定に基づき遺伝子検査について十分な説明と可能な限り家族歴を調査するために詳細な問診を行い、インフォームドコンセントを得た。眼科的検査(視力検査、眼底検査、視野検査、網膜電図)については最新の機器を用いて病変を網羅的かつ詳細に検査を行った。 (2) 先天性視覚障害疾患の原因遺伝子の変異探索:a) DNAの調製と保存: 収集した検体から血液を最大5ml採取し、DNAを抽出精製した。患者より検体を採取する際に可能な限り家族の検体を同時に収集した。(b) 次世代シークエンサーを用いたターゲットシークエンス解析: 次世代シークエンサーMiSeq (イルミナ社) を使用した。変異解析する遺伝子は、遺伝性の網膜関連疾患の原因遺伝子データベースRetNetに記載されている原因遺伝子等を対象とした。ターゲット領域のプローブはアジレント社のオンラインツールSureDesign等を用いて設計し、サンプルライブラリーの作成は、HaloPlex Target Enrichment kit(アジレント社)を使用した。MiSeq用のシークエンス試薬はMiSeq Reagent Kit v2 300 cycle等 (イルミナ社)を使用した。(c) 変異抽出のシステム化:NGSより出力された大量データは当教室で独自に構築した解析パイプラインを用いて変異探索を行った。NGSより出力されたシークエンスデータから変異抽出が出来るシステムを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本年度の研究を引き続き行う。 (1) 先天性視覚形成障害患児の収集と病態解析による臨床データの集積。(2) 先天性視覚障害疾患の原因遺伝子の変異探索(a), (b)を行う。更に下記の研究を追加する。(d) 疾患原因変異の判定と追加実験。(c)により得られた変異を我々の疾患原因変異判定基準に従って変異の絞込みを行う。結果、原因変異を同定できた検体はサンガー法による確認実験と家族の検体を利用して分離解析を行う。(e)診断プログラムの検証: 開発した診断プログラムを実施し、既に同定している変異を検出出来るか検証する。(3) 遺伝子変異と病態の評価: 得られたデータを詳細に病態解析した臨床データと統合して変異と病態の評価を行う。変異と病態を統合したデータは、わが国の先天性視覚障害患者における遺伝子変異と病態の対応関係の基盤データとなり、臨床の場で、予後予測や遺伝相談に応用する。(4) 遺伝子変異を同定できた患者の疾患iPS細胞を樹立: 遺伝子変異を同定できた患者より皮膚組織4mm片の単離・調製を行い培養し、これらを用いて疾患iPS細胞を樹立する。
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