研究課題/領域番号 |
16K11288
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
三田村 佳典 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (30287536)
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研究分担者 |
仙波 賢太郎 徳島大学, 病院, 助教 (10745748)
江川 麻理子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 講師 (70507657)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 外科 / 細胞・組織 / 生体分子 / 糖尿病 / 臨床 |
研究実績の概要 |
我々は腫瘍増殖などに伴う異常な血管新生や脈絡膜血管新生に関与しているPPARγ (peroxisome proliferator-activated receptor gamma)が糖尿病網膜症の進行にも関与していることを報告した。また、2015年のNature誌にサイクリン依存性キナーゼ5(Cdk5: Cyclin-dependent kinase 5)がPPARγの糖尿病誘発作用を促進することが発表され、糖尿病網膜症の進行においてもPPARγがCdk5の制御を受けている可能性が予想される。今回、硝子体手術で得られる増殖膜と硝子体液を用いてCdk5活性を検索し、増殖糖尿病網膜症においてCdk5の異常な活性化がないか、PPARγ濃度との相関がないかを確認するため本研究を施行した。さらに、ラットの培養グリア細胞やヒト血管内皮細胞をAGEや高濃度のグルコース下で培養することによって、Cdk5の異常な活性化をもたらすかどうかを検索する予定である。 硝子体手術時に得られた検体を解析するに当たっては、倫理委員会での承認を得たうえで、対象患者からは充分なインフォームドコンセントを得た。黄斑円孔・黄斑上膜(新生血管を含まないコントロール)、増殖糖尿病網膜症の手術時に灌流液を流す前に前房水・硝子体を吸引した後、直ちに-80℃にて保存した。また、黄斑上膜、増殖糖尿病網膜症の増殖膜検体を採取し、免疫染色用検体については直ちにOCT compoundに包埋し凍結させた後、-80℃にて保存した。増殖糖尿病網膜症ならびにコントロールとして黄斑円孔・黄斑上膜症例の硝子体ならびに前房水検体、それぞれ88検体についてELISA法による硝子体・前房水PPARγ濃度の測定、Cdk5活性の計測を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
徳島大学病院倫理委員会の承認ならびに患者さんの承諾を得たうえで、増殖糖尿病網膜症ならびにコントロールとして黄斑円孔・黄斑上膜症例の硝子体ならびに前房水検体、それぞれ88検体を硝子体手術時に眼内還流液の還流を始める前に採取し、ELISA法による硝子体・前房水PPARγ濃度の測定を行った。測定値は糖尿病網膜症で見られる血液-網膜関門の破綻に伴う血漿成分の漏出による影響を排除するため、総蛋白濃度で割ることにより補正した値を用いた。前房水については、増殖糖尿病網膜症では0.375±0.466 nmol/mgであったのに対してコントロールでは0.072±0.078 nmol/mgと増殖糖尿病網膜症において有意に前房水PPARγ濃度が高かった。また、硝子体についても増殖糖尿病網膜症では0.581±0.683 nmol/mgであったのに対してコントロールでは0.077±0.090 nmol/mgと増殖糖尿病網膜症において有意に硝子体PPARγ濃度が高かった。Cdk5活性についても前房水・硝子体とも増殖糖尿病網膜症で高値を示した。
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今後の研究の推進方策 |
1)平成29年度に引き続き黄斑上膜(新生血管を含まないコントロール)、増殖糖尿病網膜症の増殖膜検体を採取し、免疫染色用検体については直ちにOCT compoundに包埋し凍結させた後、-80℃にて保存する。 2)平成29年度に引き続きCdk5活性変化の検討を進める。増殖糖尿病網膜症の前房水・硝子体液検体についてはELISAキットを使用してPPARγ量を測定する。同時に総蛋白量も分光光度計を使用して測定し、総蛋白量におけるPPARγ量を補正する。また、前房水・硝子体検体を抗Cdk5抗体で免疫沈降したのち、ヒストンHlと反応させヒストンH1のリン酸化によりCdk5活性を検索する。 3)増殖膜および特発性黄斑上膜の網膜前膜(新生血管を含まないコントロール)のヒト手術検体からRNAを抽出した後cDNAを合成する。Cdk 5およびCdk 5の制御因子であるp35に特異的なプライマーを用いた定量的PCR法により、両群におけるCdk 5、p35遺伝子発現量を比較検討する。Cdk 5、p35、p20(p35の分解産物)タンパク質の発現量についてもWestern blotting法により確認する。また同検体から得られた同量の細胞質画分の蛋白質を,抗Cdk5抗体で免疫沈降したのち,ヒストンHlと反応させ,ヒストンH1のリン酸化により蛋白質量あたりのCdk5活性を検索する。PPARγや、VEGFなど血管新生に関与するサイトカインの発現量変化についてもWestern blotting法を用いて調べる。一方、両群のヒト手術検体から凍結切片を作成し、蛋白レベルでの発現パターンについてCdk5抗体を用いた免疫染色法により比較する。さらに、血管内皮細胞などの特異抗体との免疫二重染色を行い、増殖糖尿病網膜症の増殖膜におけるCdk5の局在について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に納品であった物品の代金が4月支払いとなったため。
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