研究課題
緑内障で特異的に障害される網膜神経節細胞(Retinal ganglion cell, RGC)を、実験哺乳動物から大量に取得する技術を応用し、①網膜神経節細胞に対する直接的な神経保護作用や②神経突起伸長・再生作用を促す薬剤のスクリーニング研究を行った。RGCはSprague‐Dawleyラットより単離培養し、イメージング・サイトメーターとしてGEヘルスケア社IN-Cell-Analyzer 6000を使用した高速かつ自動の共焦点画像取得を行い、GE社あるいはMetaMorph社の自動定量解析ソフトウェアを用いて自動解析し、低バイアス高速スクリーニングを施行した。その結果、①ヒストンH3脱メチル化酵素阻害薬であるトラニルシプロミンが、グルタミン負荷神経細胞障害時に有意に細胞生存率を向上させることを発見した。同薬はエピジェネティックな働きを持ち、RGC障害時にp38 MAPKγの発現変化を介することで神経保護作用を示していることを確認するとともに、緑内障動物モデルにおいても神経保護作用を呈し得ることを見出した。その成果はIOVS誌に掲載されるとともに、国内特許(特願2016-011705)およびPCT出願(14025PC09)をした。また、②RGC神経突起伸長に影響を与えうる新規の薬剤としてアデノシンレセプター(AdoR)A3作動薬である2-Cl-IB MECAを見出した。AdoRでは、A1、A2a、A2b、A3レセプターのいずれのサブタイプも神経節細胞層に発現しているものの、応答性はサブタイプにより異なり、A3レセプター刺激のみ軸索伸長・再生能を亢進させていた。また、視神経挫滅動物モデルにおいても、2-Cl-IB MECA投与で軸索再生が促されることを確認した。これらの結果は、緑内障治療に神経保護や神経再生という新しい治療ストラテジーの創造をもたらしうる研究成果である。
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Investigative Ophthalmology & Visual Science
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PLoS One
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http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/ganka/kyousitu/gyouseki.html