研究課題/領域番号 |
16K11295
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 智 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (30613236)
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研究分担者 |
木下 茂 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30116024)
山本 順寛 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (60134475) [辞退]
出来尾 格 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 研究員 (80338128)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイボーム腺 / マイボーム腺機能不全 / マイボーム腺炎 / ドライアイ / 常在細菌 / 脂質分析 / 過酸化脂質 |
研究実績の概要 |
・マイボーム腺機能不全患者(MGD)について、炎症所見が明らかな症例(マイボーム腺炎)と明らかでない症例(oMGD)に分類し、マイボーム腺分泌脂(meibum)の性状の変化に対する脂質過酸化反応に注目し検討した。過酸化脂質(HPO)はトリフェニルホスフィン誘導体(spy-LHP, dojin)との反応により定量し、HPLC法で測定した遊離コレステロール(FC)に対する比(HPO/FC)によって比較した。HPO/FCは、マイボーム腺炎(503.3 ± 660)ではoMGD(133.8 ± 128)に比べ有意に髙値を示した。一方、健常者ではHPO/FCが高い群(1283.9 ± 1629)と低い群(44.5 ± 43)に分類された。脂質過酸化反応によりmeibumの質的変化が生じており、健常者の中にMGD予備軍と考えられる病態が存在すると推測された。 ・マイボーム腺炎患者22例(平均67.4歳)のmeibum内の細菌叢について検 討した。開口部周囲の皮膚に触れないように注意してmeibumを採取し、直ちに滅菌綿棒でANAポート微研2培地に接種、好気性および嫌気性培養へ供した。検出菌の多くは P. acnesとS. epidermidisであり、MIC(最小阻止濃度)は、P. acnes はCFDN:<0.06, CAM: <0.06, EM: <0.06であったが、S. epidermidisでは CFDN: 2~8, CAM: >64, EM: >64, MINO: 0.13~0.25であった。治療後の細菌の陰性化率はP. acnes 86%、S. epidermidis 93 %であった。高齢者のマイボーム腺炎には腺内のP. acnesのみならずS. epidermidisの増殖が関与しており、治療には薬剤耐性を考慮した抗菌薬の選択が重要であると推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者、マイボーム腺機能不全患者の脂肪酸分析、脂質過酸化物の分析、常在細菌霜の分析など、順調に症例数を増加し検討を続けることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらに症例数を増加することとガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)による脂肪酸分析に加え、液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)を組み合わせることにより、どのような脂質に実際的な変化が生じているのかを検討する予定である。その際、性ホルモンとその変化との関連についても検討したい。また、これまでマイボーム腺分泌脂(meibum)の細菌培養を行ってきたが、今後、眼瞼皮膚、眼瞼結膜嚢の常在細菌との比較、抗菌薬内服による細菌叢の変化などを明らかにするためマイクロバイオームの検討も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年12月に、研究分担者の1人(山本順寛氏)が退職し、研究分担金の残金を返還されたため、さらに、平成30年4月以降に、液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)による脂質分析およびマイクロバイオームの検討を予定しており、それらに関わる費用が必要となり、繰越使用額が生じた。
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