研究課題
ベーチェット病は重篤な眼炎症・ぶどう膜炎を繰り返し、しばしば失明に至る。2010年には日本チーム(申請者ら)によるゲノムワイド関連解析で、疾患関連遺伝子が解明された (Nat Genet, 2010)。本病は古代のシルクロード沿いに多発地域が偏在しているが、ユーラシア大陸内陸部では未知である。本研究の目的は、これまでの空白地域である、カフカス地方、中央アジア諸民族を中心にベーチェット病臨床像と遺伝子多型を検討し、あわせて東アジア、地中海周辺諸民族とは異なる独自のチュルク(トルコ)系民族における遺伝子背景についても詳細に検討することである。ダゲスタン、カザフスタン、モンゴルとの共同研究を進め、その臨床像と臨床検体を収集した。日本人患者からも臨床検体を収集した。以前は血液を検体としていたが、これらの地域では血液採取やその速やかな冷蔵運搬が困難であり、DNA がしばしば破損していた。今回は唾液を採取して常温で保存・運搬する手法を用いており、唾液内に脱落した本人の頬粘膜細胞から DNA を抽出、あわせて口腔内細菌叢の解析も行っている。現在ほぼ順調に、ユーラシアでの臨床像、疾患関連遺伝子の保有頻度、口腔内環境などの類似点と相違点の解析が進んでいる。これまでに、ロシアのダゲスタン、チェチェン、アルメニア、チェチェンに患者がみられること、カザフスタン、モンゴルにもみられることを確認した。それぞれから口腔内検体(唾液)を採取・収集しており、遺伝子背景と口腔内環境を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に則り、平成29年度は以下の成果を得た。(1)カザフスタン国立研究所との共同研究でカザフスタン人のベーチェット病の臨床像を確認した。現在英文原著として発表準備中である。(2)モンゴル国立医科大学との共同研究でモンゴル人のベーチェット病臨床像を検討した。一般モンゴル人における HLA-B51 遺伝子保有率に関する過去の論文を現地で見つけることが出来た。患者との保有比率を解析して発表する予定である。(3)モンゴル人の唾液検体を追加採取した。(4)日本人ベーチェット病患者の口腔内細菌叢と血液中自己抗体を検討した。
(1)国・民族ごとの臨床像の特徴を解析する。(2)国・民族ごとの各種抗体価などラボデータの特徴を解析する。(3)次世代シーケンサーによる口腔内細菌叢の解析を進める。(4)モンゴル国立医大との共同研究を進める。追加の臨床検体を採取する。(5)キルギスタン、ネパールから招待を受けた。平成30年度に現地を訪問して現地医師への啓発活動と共同研究の可能性を探る予定である。
計画通りに支出している。次年度も引き続き計画に則り本研究を推進する予定である。
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