研究課題
国内失明原因の第3位である網膜色素変性症は4000-8000人に1人が中年以降に発症する。加齢とともに徐々に進行する視野欠損により最終的に失明に至りうる。長寿社会においては進行期の患者が増え社会問題となる。遺伝子異常による変性疾患であり、治療法はない。本疾患の原因遺伝子の中で最多であるロドプシン遺伝子異常では、異常タンパクが蓄積して視細胞死を生ずると考えられている。そこで本研究では、異常タンパクの蓄積がミトコンドリア酸化ストレスを介して視細胞死を引き起こすと考え、P23Hロドプシン遺伝子改変マウスを用いてミトコンドリア保護による網膜変性抑制の効果を解析している。これにより遺伝子異常があっても網膜異常が進行しないための新規治療法の開発につなげる。P23Hロドプシン変異はロドプシンタンパクのN-末端から23番目のプロリンがヒスチジンに変わったものであり、米国で最も多く常染色体優性遺伝を呈す。アメリカの網膜色素変性の約10%を占める。一般にP23Hやその他の多くのロドプシン遺伝子異常はmisfoldingし、小胞体ストレスを引き起こして細胞内のCa2+を放出させ、ミトコンドリアの呼吸鎖に作用して酸化ストレスを生じさせることが知られる。P23Hロドプシン遺伝子改変マウスでは、進行性の網膜細胞死を呈することが報告されており、申請者らも確認済みである。本モデルマウスにおいてミトコンドリアに直接作用する抗酸化剤により網膜神経保護作用については、申請者らは細胞死をTUNELアッセイにより、網膜機能を網膜電図により解析している。
2: おおむね順調に進展している
解析のための本マウスの飼育は、スペースに限度があるものの、ほぼ順調に進められている。本モデルマウスの表現型が経時的に明らかにされてきており、薬効を見る実験の指標が定まっている。
本モデルマウスにおいてミトコンドリアに直接作用する抗酸化剤に網膜神経保護作用があるかを解析するために、効果の見られる量や投与間隔を明らかにする。細胞死をTUNELアッセイにより解析したり、網膜機能を網膜電図により解析したりする研究を進める。また、本薬剤はミトコンドリアに作用するため、本モデルマウスの網膜におけるミトコンドリアの状態や、薬剤投与時のミトコンドリアの状態について、リアルタイムPCRやATP産生等に着目して解析する。
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Sci Rep.
巻: 8 ページ: -
10.1038/s41598-017-18255-4.
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巻: 17 ページ: 161-166
10.1186/s12886-017-0557-5.