研究実績の概要 |
ドライアイは、国内患者数2200万人と推定される極めて有病率が高い疾患であり、重症例を含め現行の治療では不十分な例も多い。近年ドライアイ患者の角膜内の神経が障害されていることが注目されている。我々はSemaphorin-3A阻害薬ビナキサントンが角膜内の神経再生を促進することを見出しており、本研究は、涙腺摘出ドライアイモデルマウスを用いて、ビナキサントンが新たなドライアイ治療薬となる可能性を検証することを目的としている。 ビナキサントン点眼投与による角膜上皮障害治癒作用をしらべるため、点眼有無での角膜上皮障害の程度を(1)フルオレセイン染色、(2)涙液量の測定、(3)角膜知覚の測定の3つの評価法を用いて比較した。角膜上皮フルオレセイン染色では、蛍光実態顕微鏡で撮像し、画像処理ソフトを用いて角膜上皮障害の範囲を%areaとして定量化し評価した結果、ビナキサントン点眼群で障害範囲が5.4%, control群で11%と、ビナキサントン点眼群で障害が軽減される傾向を認めた。また、無麻酔下でフェノールレッド糸(Zone-quick)を用いて行った涙液量の測定では、ビナキサントン点眼群で1.6mm, control群で2mmと、ビナキサントン点眼群で有意に涙液量が保たれた(p<0.01)。マウス用に改変したコシュボネ角膜知覚計を用いて評価した角膜知覚測定でも、ビナキサントン点眼群で3.7mm, control群で1.3mmとビナキサントン点眼群で有意に知覚障害が抑制された(p<0.01)。
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