研究課題/領域番号 |
16K11300
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
榛村 重人 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00235780)
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研究分担者 |
房木 ノエミ 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (40278635) [辞退]
羽藤 晋 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (70327542)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生医療 / 角膜内皮細胞 / フックス角膜内皮変性症 |
研究実績の概要 |
Fuchs角膜内皮変性症(FCD: Fuchs corneal dystrophy)は滴状角膜という特徴的所見を伴い、原発性に角膜内皮が障害され、加齢と ともに進行性に内皮細胞数の減少をきたし浮腫性の角膜混濁(水疱性角膜症)をきたす角膜内皮ジストロフィの一つである。病因の詳 細は明らかになっていない。遺伝形式は基本的に常染色体優性遺伝形式とされてきたが、近年になってそれ以外の遺伝形式も報告され るようになった。本研究では、疾患患者6名から採血を行い、iPS細胞を樹立し、神経堤細胞(NCC;Neural Crest Cells)へまず誘導後 に、角膜内皮細胞へと分化誘導を行った。その誘導細胞を用いて角膜内皮マーカーの発現を確認し、また病 態解明のため小胞体ストレスマーカーの発現を評価した。また、患者より採取するサンプルを用いて遺伝解析も同時に行った。遺伝子 解析では、3人の日本人においてTCF4 (rs17089925), (rs17089887), CLU (rs3087554) の3箇所にSNPs変異を認め、1人のオランダ人に おいてTCF4 (rs613872), (rs2286812)の2箇所にSNPs変異を認めた。 誘導した内皮細胞をZO-1で染色し、tight junctionの形成を確認した。小胞体ストレスの発現の検証においては、TCF4変異を有するFE CD-iPS由来角膜内皮細胞(F-CEC)と健常人iPS由来角膜内皮細胞(C-CEC)を比較したreal time PCR-マルチアレイ解析から、F-CECにおい て小胞体ストレスマーカーCHOP, ERN1, PERKの増加を検出した。これらに関してreal time PCR法を追試し、F-CECではC-CECと比較し、C HOPは約15倍の発現増加を認めた(p<0.01)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画であった以下を達成した。 UPR /小胞体ストレスあるいは酸化ストレスに注目し、in vitroで のFCD発症のモデル構築を試みる。しかるべきモデル構築のうえで、さらに(4)の薬剤スクリーニングを行った 。UPR・小胞体ストレスマーカーのプロファイリング:これまで、FCDではGRP78やCHOPなどの一部のUPRス トレスマーカーについては発現増加が報告されている。そこでFCD疾患特異的iPS細胞由来角膜内皮細胞を用い て、UPR・小胞体ストレスの増加がみられるか、real time PCR法により84個のUPR・小胞体ストレスマーカーのプロファイリングが可能なQI AGEN社のキット製品を用いて評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に関しては、これまで得られた小胞体ストレスの病態関与の機序と、そのレスキューの経路を探索する。 具体的には、UPR・小胞体ストレス負荷試験:iPS細胞由来角膜内皮細胞にBr efeldin AあるいはtunicamycinによるUPR /小胞体ストレス負荷を行い、マルチアレイキットを使用することで、UPR /小胞体ストレスのどの分子の発現に変化が現れるかを検証する。また、FCDの病変部にはTGFBIやClusterinが蓄 積するので、これらの発現を表現型として、UPR / 小胞体ストレス負荷によりFCDの臨床像を再現できるか検証 する。あるいは、Ussing chamber systemを用いた角膜内皮細胞の生理学的ポンプ機能評価10)を用いて、ストレ ス負荷によりポンプ機能低下がみられるかも検証する。 次に、薬剤・低分子化合物によるレスキュー実験を検討する。 小胞体ストレス経路上の分子の阻害薬等を添加することで、各種ストレス負荷をレスキューする薬剤のス クリーニングを検証する。例えば、AMPKの活性化を介して小胞体ストレスを軽減させるAICAR、Epigallocatechi n、Arctigenin等が有効と思われる薬剤の候補である。 また、iPS細胞由来角膜内皮細胞にAging遺伝子であるProgerin遺伝子を導入すること でCell agingを加速させ、表現型に変化がみられるかを検証する。Aging刺激で表現型が得られた場合は、この モデル系を用いて更に酸化ストレス等の負荷実験を検証する方法も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 小胞体ストレス検出が順調であり目的の因子の変化を予想よりはやく同定できたため、プロファイルキットの購入など消耗品の購入が予定額より抑えられた。 (使用計画) 今年度は薬剤による病態経路のレスキュー実験を重点的に実施する予定であり、前年度分の繰り越し分も含めた予算で新規試薬などを購入予定である。
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