研究課題/領域番号 |
16K11303
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
松田 彰 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00312348)
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研究分担者 |
岩本 怜 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10568207)
浅田 洋輔 順天堂大学, 医学部, 助教 (70596626)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンパ管 / 緑内障手術 / 創傷治癒 |
研究実績の概要 |
1.マウス濾過手術モデルを用いたリンパ管の変化の経時的観察:濾過手術によって結膜リンパ管が障害され、その後再生される経時的変化をリンパ管マーカー(Prox1)のレポーターマウスを用いて観察した。また同時に炎症細胞(リンパ球、マクロファージ)の浸潤について、免疫組織染色で観察した。2.濾過手術後の結膜リンパ管流と術後眼圧の関係:マウス濾過手術モデルにおいて、濾過胞のリンパ管を実験的に促進(リンパ管増殖因子の強制発現)し、濾過胞の形状や眼圧に与える影響を評価した。3.術後の炎症細胞浸潤がリンパ管流に与える影響:マクロファージを除去したマウス(クロドロン酸投与)を用いて濾過手術を施行し、マクロファージが濾過手術術後のリンパ管流に与える影響を検討した。4.毛細リンパ管からの房水吸収の解析:濾過手術術後にフルオレセインを前房内に注入し、毛細リンパ管からの房水吸収をin vivoイメージングにて観察した。5. 濾過胞におけるVEGF-C過剰発現および発現抑制モデルの解析:濾過手術におけるリンパ管の役割を明らかにするため、Prox1-Cre-Tomatoマウスに濾過手術を施行し、マウスVEGF-Cを含んだペレットを留置し、濾過胞の維持状態、リンパ管の再生および新生と術後眼圧を対照群と比較検討した。その結果、VEGF-C投与はリンパ管のみならず、新生血管を濾過胞に誘導し、濾過胞の維持には貢献しない事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス濾過手術モデルの作成とリンパ管イメージングに関しては概ね、計画通りに進行した。Prox1-Cre-Tomato蛍光色素レポーターマウスをジャクソン研究所から導入し、濾過手術の前後におけるリンパ管の分布の変化を蛍光実体顕微鏡により可視化ことを現在試みている。蛍光量が予想より弱いので、撮影方法等の工夫を試みている。 濾過胞におけるVEGF-C過剰発現および発現抑制モデルの解析に関しても、マウスVEGF-Cを含んだペレットを留置し、濾過胞の維持状態、リンパ管の再生および新生と術後眼圧を対照群と比較検討した。その結果、VEGF-C 投与はリンパ管のみならず、新生血管を濾過胞に誘導し、濾過胞の維持には貢献しない事が明らかになった、今後VEGF-Cの特異性等に配慮して実験を継続してゆく。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、濾過胞におけるVEGF-C過剰発現および発現抑制モデルの解析 前年度に引き続き Prox1-Tomatoマウスに濾過手術を施行し、よりリンパ管への反応特異性の高い、リコンビナントVEGF―C (Cys156Ser)の局所投与の効果を検証する。術後炎症とリンパ管流の解析:リンパ球を欠くBALB/C-Rag2欠損マウスおよびクロドロン酸リポゾームを用いたマクロファージ除去マウスモデルに濾過手術を施行し、対照野生型マウスとの間で、濾過胞の維持状態、リンパ管の分布(ホールマウントLYVE-1免疫染色)と術後眼圧経過、術後組織における組織瘢痕化マーカー(3型コラーゲン、ファイブロネクチン、alpha-smooth muscle actin)発現を比較する。 術後炎症とリンパ管流におけるTh2型炎症とTh2サイトカインの役割:結膜組織に多量のTh2リンパ球の浸潤が見られるブタクサ誘発実験的アレルギー性結膜炎モデルマウスを用いて、濾過手術を施行し、Th2型炎症下でのリンパ管流と眼圧の変化を対照マウスと比較する。このとき、同時に濾過胞におけるM2マクロファージのマーカー(Arg1, CD164)発現を解析し、浸潤マクロファージのサブタイプと術後のリンパ管流の変化並びに眼圧の関連を評価する。また、逆にTh2サイトカイン(IL-4またはIL-13)欠損マウスを用いた濾過手術を施行し、上述の実験の検証を行う。さらにin vitroでTh2サイトカインを加えた条件下で培養し,M2型に分化誘導した腹腔マクロファージを赤色蛍光標識PKH26(Sigma)して、濾過手術の術後に前房内に注入し、リンパ管分布、術後眼圧経過、術後の組織瘢痕化マーカー発現をマクロファージ除去モデルと比較する。
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